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ドラムシティ オリジナル スティック 其の6 Big ear Mark1
この世には無数の種類のスティックが存在しますが、皆さんはどんなスティックをお使いでしょうか?
長さ、太さ、重さ、バランス、チップの形、素材など、こだわる点が沢山あると思います。
スティックメーカーやドラムメーカーからも数多くの選択肢が提供され皆様の要望に応えるべく、常にラインナップは拡張と収縮を繰り返しています。
しかし、「あのモデルのここがもう少しこうなっていれば」、「廃番になってしまったあのモデルが欲しい」など、様々な意見を寄せられることも少なくはありません。そんな中、ドラム・シティではこだわり抜いた、痒い所に手が届く数種類のオリジナルスティックをご用意。
ドラム・シティ オリジナルスティックレビュー第6弾!!
今回も引き続き、浅草ドラム道場 講師の市川宇一郎氏に講評をいただき、その使用感やこだわりポイントをお伝えして参ります。
皆さんのスティック選びにご活用いただけたらと思います。
※この記事は2022年7月発行「JPC 173号」に掲載されたものに加筆修正をしたものです。
▶ 今回ご紹介するのは Big ear Mark1
その名の由来は、某有名ジャズドラマーが常々口にしていた「耳の良い人」を表した言葉。音を理解し、音を選べるプレイヤーになってほしいという願いのもと製作いたしました。
かなり細めのグリップで、チップも小さめのオーヴァル型の為、繊細なプレイにおける表現力に優れています。また、テーパー部分を短めに設定することで重心バランスがかなり先端(チップより)になっているため、適度な重みを感じることが出来、ここぞという時のパワーも確保いたしました。手が小さい方にもオススメです。
▶ 市川宇一郎さんに実際に試していただき、使い心地など、感想を伺いました
とにかく、懐かしいスティックなんです。はじめてこのスティックに出会ったのは、もう40年以上も前のこと、原宿の裏手にあった音楽専門学校のスタジオでした。そのスタジオのドラムセットのバスドラの上に、誰のものだか知らないけれど、このスティックのモデルとなったスティックがポンと置いてあったのです。それを勝手に使ったのが、某社製の有名ジャズドラマーモデルとの出会いでした。
いま、40年ぶりに振ってみると、気のせいでしょうか、全体的に少し細くチップも小さくなったように感じます。なにしろ、久しぶりの再会です。その間、いろんなスティックを使い、好みも変わってきましたから、やけに細く感じられたのかも知れません。
そんな印象の違いにもかかわらず、しばらく叩きこんでいると、かつて馴染んだ感覚が手によみがえってきます。短めのスティックがもつ直線的な打感。腕の動きをダイレクトに伝えてくれる感触。これらは腕とスティックとのあいだの「遊び」が少ないために生まれる特徴です。つまり、こういうスティックは、どちらかと言えば、しなりのある柔らかいリズムよりも、直線的なリズムを打つのに向くのです。
このスティックを使用していた有名ジャズドラマー自身はこのスティックをどんなふうに握っていたか分かりませんが、もし長めに持っていたとすれば、この短めスティックでも、しなりや粘りのあるリズムを作るのは可能だったはずです。そうすれば、短めのスティックのもつ操作性の良さと、しなりのあるリズムの両方を得られます。
重さを計ってみると、軽いのは40~43gくらい、中くらいのは45gくらい、重いのになると48gくらい、という結果になりました。振りやすいのは45g前後だと思われますが、私はあえて重いの(48~50g)の2セットを選びました。太くどっしりした音が期待できるからです。
使ってみると、やっぱり細さが気になります。チップもかなり小さく感じます。ふだんは5Bクラスを使用しているので、今回ご紹介したモデルは各段に細く短く感じるのです。「やっぱり合わないかな~」と思いつつ、小1時間も叩いたでしょうか。ふと気がつくと、手や腕にさほど違和感がないんです。「合わない」と思っているのは、あくまでも意識の面であって、身体のほうは心地よく受け入れているんですね。
たぶん、自分に合うのはこういうスティックなんだと頭できめつけていたんでしょう。そんな意識の面とは関係なく、身体は覚えているんですね。どんなスティックが振りやすいのか、腕や手首や指は、理屈なしで覚えてる。そんな発見が、久しぶりにこのスティックを握ってみて、ありました。
道具っておもしろいですね。道具をつかうのは、頭でなく、身体です。このモデルは、そんなあたりまえのことを、あらためて教えてくれました。
執筆者:市川 宇一郎 、ドラムシティ(木澤)