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ドラムシティ オリジナル スティック 其の2 BZ402A
この世には無数の種類のスティックが存在しますが、皆さんはどんなスティックをお使いでしょうか?
長さ、太さ、重さ、バランス、チップの形、素材など、こだわる点が沢山あると思います。スティックメーカーやドラムメーカーからも数多くの選択肢が提供され皆様の要望に応えるべく、常にラインナップは拡張と収縮を繰り返しています。
しかし、「あのモデルのここがもう少しこうなっていれば」、「廃番になってしまったあのモデルが欲しい」など、様々な意見を寄せられることも少なくはありません。そんな中、ドラム・シティではこだわり抜いた、痒い所に手が届く数種類のオリジナルスティックをご用意。
前回(DX-18)に引き続き、浅草ドラム道場 講師の市川宇一郎氏に講評をいただき、その使用感やこだわりポイントをお伝えして参ります。
皆さんのスティック選びにご活用いただけたらと思います。
※この記事は2021年7月10日発行「JPC 169号」に掲載されたものに加筆修正をしたものです。
▶ 今回ご紹介するのはBZ402A
廃番となったLudwigの2Aを意識して制作したモデル。Ludwigの2Aはイギリスのハードロックバンド「Led Zeppelin(レッド・ツェッペリン)」のドラム、John Bonham氏(ジョン・ボーナム)が1977年以降に使用していたと言われているスティックです。
最初に制作したモデルは残されたカタログスペックと画像をもとに最大限の想像力を働かせてリリースした「のような物」でしたが、その後、なんと実物を保管していたお客様のご厚意により、サイズなどの正確なトレースが実現。より本物に近づいたモデルとして生まれ変わりました。
15.9mmという太めのグリップながら、急激に絞りこまれたテーパー形状により、コントローラブルな振り心地とナチュラルなリバウンドを実現。これによりスティック自体の重量はそれほど気になりません。
逆に、力むこと無く楽に、素直にスティックを落としてあげるだけで、かなり太いサウンドが引き出せます。
グリップ部との対比でネックが極端に細く見えますが、5A程の太さは確保。極端なハードプレイには向きませんが、しっかりとあなたのプレイを支えてくれるはずです!
▶ 市川宇一郎さんに実際に試していただき、使い心地など、感想を伺いました
こんにちは、ドラム道場の市川宇一郎です。今回も引き続きドラム・シティの復刻版スティックを紹介しましょう。
さて、さっそくですが、このモデルを見て(写真参照)みなさんはどんな印象を持ちますか?たとえば、こんなふう?―――「グリップ部分はけっこう太さがあるのに、ショルダーはやけに細い。チップも小型で、その形ときたら、なんか古臭くて、ロックやジャズに向くようには思えない」―――とか。
実際に手に取ってみると、太さの割りにショルダー部分が細く、重心が手元近くにあるので、クローズド・ロールをやるときに、チップがピタッとヘッドに吸いつきます。そうなんです。はっきり言って、クラシック向きなんです。ところが、ハードロック・グループ「レッド・ツェッペリン」のドラマー、ジョン・ポーナムがこのスティックを好んで使ったので、彼を慕うドラマーに広く使われてきたという一面もあります。
それじゃ、さぞかしパワフルなプレイに向くんだろうな、と思われるでしょうが、いえいえ、重さの割りにはショルダー部分が細く、チップも小さいので、意外なほど繊細で、ハードに叩いても音が暴れにくいんですね。と言っても、スティック自体の重さがあるので、繊細だけれど音に太さがあります。おもしろいでしょ。こんなスティック、なかなかありません。しかも、コントロールしやすい。ダブル・ストロークやシングル・ストロークの音ツブをきれいに揃えて連打するようなとき、その効果を発揮してくれます。
こんな個性的なスティックをハードロック・ドラマーが愛用していたなんて、ちょっと意外な感じがしますが、実のところ、彼はけっこう繊細な感性をもっていたのかも知れませんね。ただたんに、大きな音を欲していたのなら、それにふさわしいスティックがもっと他にあったはずです。たとえば「5B」のスティックとか。なのに、それを選ばなかった。そこに彼の求める音、もっと広げて言えば、音楽性があったと考えられます。
誰もが何気なくやっている「叩く」という動作ですが、じっくり観察すれば、みんな微妙に異なっているものです。ピッチャーの投球フォームにしたって、ゴルファーのスイングにしたって、そうです。みんなわずかにちがうでしょ。あれとおんなじ。
で、なぜ叩き方が異なっているのかと言えば、本人が意識するしないにかかわらず、求める音が微妙に違ってるからなんです。そこで、自分の求める音を出しやすい道具を、つまりスティックを選ぶのです。それも、ほとんど直観的に。理屈じゃないんです。
みなさんも、ぜひ、このスティックを試してみてください。うまくマッチするかもしれないし、ダメかも知れない。しかし、たとえダメでも、どうしてダメなのかを突き詰めていくと、自分がホントのところどう叩きたいのか、そしてどんな音を出したがっているのか、重要な発見があるかも知れませんよ。
それでは、また次回!
執筆者:市川 宇一郎
編集:Drum City