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無垢の木材にこだわる高品質スネアドラム M drums
無垢の木材にこだわったスネアドラムを幾多の試行錯誤を繰り返し、2022 年4月から国内での販売を開始。さらに海外でも注目され始めている宮崎県発の M drums。
ドラムシェルに対する考え方や製造方法などについて、代表者の堀内誠氏にもお話を伺いながら、一体どんな物なのかをチェックしてみました。
取材&テキスト:ドラムシティ吉田&編集部西尾
取材協力& 画像提供:M drums
■ M drumsとは
一級建築士であり、本格和風住宅を手掛ける堀内氏のドラム好きが嵩じて立ち上げられた、完全受注生産によるドラムブランド、それがM drums。
名器と呼ばれる数多のドラムを分解・組み立て・改造などを繰り返し、ドラムづくりに関するノウハウを研究、約10年前の第一号機作成からスタートしたドラム製作は、
以降数々の試作を繰り返し今に至っているそうです。
■ 無垢の木材へのこだわり
一般的にドラムシェルとして使用されるプライウッド(合板)や単板は、熱や蒸気等で強制的に筒状に仕上げるため材にストレスがかかっており、木材の本来の状態ではないと考えられます。M drumsが考える究極のドラムシェル=素材にストレスをかけないドラムシェル成形を実現させるため、レインフォースメントリブ工法やブロックソリッド工法といった独自の工法を開発することで、木材が本来持つピュアなサウンドを引き出すことを目指しています。シェルの経時変形リスクに対しては、乾燥、シーズニングのプロセスを徹底し、最大限に防止しています。
■ ラインナップ
原材料の木材の状態により「KURINUKI」シリーズ、「BLOCK」シリーズの2種類がラインナップされています。
どちらのシリーズもオーダーメイドが基本となりますので、具体的なモデルの設定はありませんが、お好みの素材、サイズ、パーツの選択が可能だそうです。
これまで実際に製作したスネアドラムでは、欅・樫・桜・楠などの国産材や、ブビンガ・マホガニー・パープルハートなどの輸入材があるそうです。
■KURINUKI SERIES
丸太の赤身の部分をくり抜き、極限まで薄く成型したシェル(8 ~ 10mm)+レインフォースメントにより製作されます。くり抜きでありながら胴鳴りが感じられる音抜けの良いナチュラルなサウンドが特徴です。オプションとして削り出しのレインフォースメントリブ(シェル中央の膨らんだ部分)が選択可能です。レインフォースメントリブ工法で製作される削り出しのリブは、強度確保と唯一無二の存在感で、美術工芸品の域まで引き上げワンアンドオンリーの楽器へと昇華しました。
※レインフォースメントリブは、第154号 宮崎県伝統工芸士(宮崎ろくろ工芸品)山之上弘美氏とのコラボ作品で、山之上氏監修の元削り出されます。
■BLOCK SERIES
厚みをできるだけ薄くするため接合部に「雇いざね継」を採用することで、木材に一切ストレスのない理想的なシェル成型を可能としたブロックソリッド工法で製作されます。様々な材を2 ~ 10個という少ないブロックを接合した後、シェル形状に削り出す工法です。、薄い(8 ~ 10mm)シェルからは胴鳴りの感じられる音抜けの良いナチュラルなサウンドが特徴です。
※雇いざね継とは、接ぎ合わせ面となる両木端の共通位置に実溝(さねみぞ)と呼ばれる溝を切り、溝にあわせて別に実(さね)を作ってこれを挟み、接合する方法です。ただ単に平面と平面を突き合わせるよりも接着面積が増え、接合力も大きくなります。
■ サウンドの印象は?
これまでの無垢材によるくり抜きシェル製法の場合、真円度や強度を確保するためにかなり厚めに成形されたシェルが多く見られ、出来上がったばかりの若い楽器の場合、ふくよかさに欠けたかなり硬めのサウンドになる印象がありました。
M drumsのシェルは、先の独自の加工法を取り入れることで強度を確保しながらも薄く整形されているため、初めてそのサウンドを聴いた際は、従来のくり抜きシェルのスネアドラムの先入観から、ソリッドかつヘビーなサウンドを予想していたため、正直なんとも言えぬ違和感を覚えました。ただし、それはあくまで自分の中に存在していないフィーリング(タッチやサウンドなどすべての面)であったためであり、じっくりと試していくうちにその違和感は払拭されていきます。
どう説明して良いのか難しいところですが、クリアかつレスポンシブ、ファットかつパワフルの共存とでも言いましょうか、とにかくその生音を体感することで、得も言われぬ可能性を秘めている楽器であることは十分すぎるほど理解いただける存在であることは間違いありません。
ドラムシティ店頭で開催された試打会でも、たくさんのドラマーに実機をお試しいただき、高い評価を受けています。
■ 代表の堀内氏に自身が製作したM drumsについてお話を伺いました
ドラム製作に至った経緯をお聞かせください
中学生の頃よりドラムを始め高校生の時にはスネアのシェルを切ったり塗装をしたりしていました。その後現在に至るまで名器といわれるドラム、ハイエンドドラムを収集してはバラし、組立、不具合箇所の修理を約40年間してまいりました。
2013年にオリジナルスネア第一号機を製作、その後研究を重ね55歳を迎えた2021年に本格的にスネアドラムの製作を開始いたしました。ロック、ジャズ、ラテン、様々なジャンルのドラマーに好評を得て使用していただいております。
M drumsの特徴は?
無垢の木材にこだわり、薄いシェル厚で胴鳴りの感じられる究極のドラムをテーマにしております。九州の地元で入手できる原木(丸太)を輪切りにし、その後くり抜いてドラムを製作します。
シェル厚をできるだけ薄くするために、レインフォースメントリブ工法(実用新案登録済)で製作しております。
丸太で入手できない材(ブビンガ、ウォルナット、マホガニーなどの外国産材)は実用新案を取得したブロックソリッド工法(2 ~ 10ブロックのステイブシェル)で製作します。
M drumsを試奏された方からは、打感が柔らかい、音量が大きい、音が抜ける、音が繊細と多くの評価いただいております。
今後の展望をお聞かせください
販売店さんのコンサートパーカッションの担当の方やオーケストラ奏者の意見、アドバイスを元に、オーケストラや吹奏楽専用のモデルOrchestrlを開発し販売を予定しています。
更には、現在くり抜きのドラムセットも開発中です。
M drumsを叩いた方が笑顔になれるような楽器作りを目指していきたいと思います。
堀内 誠 プロフィール
大阪生まれ宮崎県育ちのドラム歴42年のオールラウンドドラマー。特にジャズやラテンドラミングを得意とする。
一級建築士で本格和風住宅を手掛ける工務店の業務のかたわら、自己のバンドで宮崎県のみならず様々な場所でライブ活動を行い、2018年にはリーダーアルバム「 What Is This ? 」をリリースする。
2013年にオリジナルのスネアドラムの第一号器を製作し、その後研究を重ね2021年4月よりM drumsとしてスタートする。
執筆者:ドラム・シティ 吉田 & 編集部 西尾
取材協力:M drums