From the percussion room of the world
世界の打楽器部屋から Vol.21|アメリカ合衆国 ニューヨーク 舩山花菜
世界各地で打楽器人生を謳歌する日本人にスポットを当てた人気シリーズ。 今回はアメリカ「イーストマン音楽大学 Eastman School of Music」に在籍されている、舩山花菜さんにご寄稿いただきました。
※この記事は2022年10月発行「JPC 174号」に掲載されたものです。
現地情報
- 国:アメリカ合衆国
- 地域:ニューヨーク州、 ロチェスター
- 生活言語:英語
- 日本との時差:-14時間(サマータイム時-13時間)
みなさま、こんにちは。打楽器奏者の舩山花菜です。歴史あるこの会報誌の一ページを担 当させて頂けるということで、いつもお世話になっているJPCの皆様へ感謝の気持ちを込め ながら、今私の住んでいるアメリカの暮らし、学校の様子を少しずつご紹介できればと思い ます!
●アメリカ
合衆国と名が付くように、様々な人種、文化、宗教などが集まっている国です。人種の多様性から食も様々。レストランはアジア系、ヨーロッパ系、メキシカン、アメリカン、そして多くのレストランがベジタリアン、ヴィーガン向けのメニューも取り揃えています。日本食レスト ランもあり、お寿司も食べることができます。特に海が近いところには日本のクオリティに負けない新鮮で美味しい生魚を食べられるところもあり、こちらへ来てから日本食シックになることもなく一年が過ぎました。スーパーに行けば野菜、果物、お肉、飲み物、調味料、それ 以外のものも全て種類豊富に並んでいて、多様性を身近に感じる国です。
こちらで暮らし始めてまず第一に感じたことは、一人ひとりが違うというのが当たり前、それが前提にありそしてその多様性であること受け入れ繋がっていく事が何の問題も壁もなくできる、ということ。とても美しいな、と感じました。もちろんみんながそうではなかったり、様々なニュースも出てきますが、外国人である私にとっても自分が外国人であることを感じさせない、心地の良いあたたかい環境だと感じています。
その一方で、私の住むロチェスターは決して安全な場所ではなく、銃撃事件のとても多い地域です。陽が沈んだ後に一人で外を歩くことは身を危険に晒す行為でしかなく、行動が限られます。自由に外の空気を吸って自然の中に身を置く事からエネルギーを得る私にとっ ては、残念ながら決して住むのに適した場所とは言えません!そして、ここはアメリカのどの大都市よりもカナダのトロントが近いアメリカの北部、冬がなんと6ヶ月間もありました。それも氷点下20度ほど、身が凍ってしまうほどの極寒の冬です。4月になっても春が来ないと いうことがこんなに悲しいだなんて、、という思いを初めて経験し、日本の四季は素晴らしい と言われるけれどまさにこういうことなの か、と身をもって日本の素晴らしさを様々 な場面で改めて感じています。
●イーストマン
私が入学した年が学校創立100周年記念の年でした。何という素敵なタイミングで入学できたのでしょう!と喜びいっぱいの スタートでしたが、学校もお祝い感満載、 記念コンサートが多くあり、日々の授業の他にいくつもリハーサルとコンサートをこなす怒涛の生活です!
オーケストラや打楽器アンサンブル、現代曲室内楽、他の科やダンスとのコラボコンサートなど編成も 演奏する曲も様々です。そんな忙しい生活も、お互いを支え応援し合いながら切磋琢磨のできる素晴らしい仲間たちが周りにいるおかげで、全て楽しく乗り越えられます。そんな友人達や、あたたかい教授には いつもとても感謝しています。学校はそれでかつ学問的で座学も多く、宿題も毎授業しっかり出ます。試験は筆記に加えてプレゼンテーション、初めてしっかり大学生をしている感じがします。笑
●スタジオクラス
週に一度ゲストを呼んでマスタークラスが 行われます。アメリカ国内外で活躍されている多くのアーティストの方々から直接学べる刺激のあるクラスです。ゲストは毎回様々、オーケストラ、マリンバ、ジャズプレイ ヤー、作曲家など。写真はLeigh Howard Stevens氏を招いた際のものです。
●イーストマン・パーカッション・アンサンブル
2022年3月に行われた初演コンサート。著名な作曲者の方々が私達のために作品を委嘱してくださいました。作品はグラミー賞受賞のBilly Childs氏、ピューリッツァー賞受賞で Velocitiesの作曲者Joseph Schwanter氏らによるもので作曲者ご本人たちが実際にリハーサルに立ち会ってくださり、直接作曲意図を聞いたり、意見交換をしたり、という貴重な時間を過ごしました。観客席もほぼ満席、良い緊張感とエネルギーで、感動の大成功に終わりました。
●楽器
Michael Burritt教授がMalletechアーティストであることから学校にはMalletech社のマリンバ が多く置いてありますが、YAMAHA、 Marimba One、Adamsも一緒にあり、選んで使用する事ができます。
他楽器も種類豊富に揃っており現代曲など用に細かい指定のある楽器や、オーダーメイドで作って欲しい楽器がある時には直ぐに手配をしたり制作してくださるとても心強い打楽器テクニシャンが学校にいます。 ありがたいです。
●最後に
創造的で多様、そして多方面に渡って活躍する人たちが多くいるこの国、環境に身を置くことで刺激のあるワクワクな日々であることはもちろん、まだ自分では気づけていない様な面でもきっと成長させてもらっているんだと感じます。身だけはしっかり守って、生き延びたいと思います。私はアメリカがとても好きです!!
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舩山花菜 プロフィール
福島県出身。東京藝術大学卒業。
Trinity International Music Competition 2021第1位等受賞歴多数。
マリンバソロをはじめ、リサイタ ル、室内楽、オーケストラ、レコーディングなどフリーランス活動期間を 経て渡米。これまでに仙台フィルハーモニー管弦楽団と共演。アメリカで の打楽器フェスティバルのゲスト講師を務める。
現在イーストマン音楽大学修士課程在籍。同校最高名誉であるPerformance Certificateを授与された。PASIC2022にイーストマン・パーカッションアンサンブルとして出演予定。
趣味はロードバイク。冬はスキー。