THINGS|こと
2026年全日本吹奏楽コンクール課題曲 ワンポイントレッスン
毎年恒例!
NHK交響楽団首席代行ティンパニ奏者の植松透氏に
課題曲演奏の取り組み方を伺いました!
植松氏独自の解釈で課題曲演奏がさらに楽しくなるかも!?
取材:パーカッションシティ本山、川原
1番 「夕映えの丘」/ 森山至貴
まず 3 小節目のクラッシュシンバルズは、音を伸ばすマークがついてフォルテと書いてありますが、これをどのように演奏しようかということを考えなくてはいけませんね。
その時に多分先生は「柔らかく」とか「タップリと」などと言うのではないかと思うのですが、その時に自分の中に「タップリ」っていう感覚がないとどうしようもありませんよね。フォルテで伸ばしてとしか楽譜には書いていないのですから、これを忠実に演奏する
となると、フォルテで演奏するしかないわけです。それで間違っていませんし、それぞ
れがこう感じた、それだったらこうやるべきじゃないかっていう考えは一体どこから来
るんだっていう事ですよね。

日常生活で何かを見て、自分で何かを感じる。今は春の真最中、桜は満開(取材日:4 月 1 日)、桜以外の木々も今芽を吹き出しているところですよね。その様な日々変わりゆく季節や風景に興味を大いに開くという事。春は春の興味っていうものを大いに開き、春には春の夕映えがあると思いますし、夏には夏の夕映えがあると思います。そうすると、これは夏の夕映えですか?春の夕映えですか?コンクールはいつやるんですか?こういう話で何か夕映えのイメージも変わってくると思います。イメージした夕映えの音を出すという意味ではないんですけれど、今思っている音が夏になったら変わるかもしれないわけです。それは季節が変わるから。体の表面温度も変わりますし、今は花粉がたくさん飛んでいるから、僕は全く活動が出来ないんだけどとか皆な色々ありますよね。そういうことも含めて、季節によって、時間によって、興味さえ持っていれば、色んなものが違って見えるということ。そういうものの中から、この音ってどういう音かなってことを考えることがとても楽しいんですよね。この作業に経験は特に必要ありませんので、是非色々なものに興味を持ち、そこからヒントを見つけ出してみてください。
もちろん、アドバイザーからアドバイスをもらうことはとても大切な事ですが、それより
も自分たちの感性というものをもっと信じて、自分たちで 1 つ 1 つの音を作る練習をしている過程で、僕はこういう音が出したいけれど出せないなっていう時がありますよね。
やっぱり自分の今思っている音が出せないっていう時に、どの様にしたらその音が出せるかって事を考えるのが大事だと思います。その時には違う情報源が必要になってきます、それは技術的なことですよね。例えばシンバルだったらこことここを当てるとこういう音がする、とか、こことここをちょっと当てるとこういう音になるとか、その辺のちょっとした技術っていうのをアドバイザーに聞くといいと思います。アドバイザーに教えてもらう過程で、こんな技術もある、あんな技術もある、僕の知らない技術が沢山あるという事に気付くと思います。でも出したい音が出せない、そういう時はたくさんの曲の音を聴いてみることが何よりも大事なことです。自分で思った音のイメージがあったら是非演奏会を聴きに行ってみてください。
それはこの曲じゃなくても良いんです。大切なのはシンバルが出てくる曲っていう事です。夕映えのシンバルを追いかけているんだけれど、実際に演奏を聴きに行くと、シンバルにも色々な音があるんだなっていうことが分かってきます。そうすると、夕映えのことだけ考えてシンバルの音を作ってはいけないんだなってことも分かってくると思います。実際に聴きに行くと、想像よりもっと面白い音があったり、もっと素敵な音があったり、もっと涙が出るような音があったりっていうことも知る事が出来ると思いますよ。実際の音楽からそれを情報として、感動として得るということに沢山興味を持つ事が大切です。色々な演奏を聴くことによってシンバルという楽器の音色の幅が広がります。夕映えの音はもっと広がってくるっていう風に、だんだん分かってくると思います、それが何より大事なことです。そういうことを日常の中にヒントをいっぱい見つけて、音のイメージを膨らませていって欲しいですね。
もちろん、これはこの曲のシンバルだけのことを言っているのでは無くて、全ての楽器、全ての曲、全ての場面に共通することです。自分の中の音の引き出しを沢山持つようにしましょう。演奏する曲だけでなく沢山の演奏を聴きましょう。この作業に終わりはありません。私も続けていることです。
A 2 小節目からのグロッケンについて、レは聴こえるんだけれど、ミファソラシドが聴こえなくなってしまわないように、それぞれの音に深みをきちんと持たせましょう。レの
上にミが乗って、ミの上にファが乗って、ファの上にソが乗って、その上にラが乗るっ
ていう感覚を常に持って演奏すると良いでしょう。

A 4 小節目のウィンドチャイムの奏法は無限にあるものの中から探すという努力をし
てみると良いと思います。付属品で金属のバチが付いている楽器もあるし、トライアングルビーターを使ったり、マレットの柄を使ったり、指で演奏したりするのが当たり前に
なっていると思うのですが、例えば指ではなくてバナナで擦ってみるのはどうですか?
バナナって指より柔らかいですし、なんかいい音がしそうじゃないですか?(笑)ただ
良い音を出せたバナナをコンクールの日まで腐らせずに持っておくのは難しいですよ
ね(笑)だから選ばれないかも知れませんが、そのような自由な発想を持つようにしま
しょう。
それと、ウィンドチャイムも種類がたくさんありますよね。私は弟子が作ってくれたウィ
ンドチャイムを持っていますが、それは釘がぶら下がっているだけの楽器なんです。
でも本当に素敵な音が鳴ります。ただ、同じ長さの釘なので上行系下行系ができませんけど。ウィンドチャイムをその様に演奏しようかなって考えた時に、私は「1 番キラキラした音」とか、ここでウインドチャイムを使うっていうこと自体の意味をやっぱり一か
ら考え直しますね。それは逆に言うと、作曲家に対しても奏者側からのアプローチになるわけです。1 つの音をうまく作るためにはどうしたらいいんですか?っていう話かもしれないけれど、発想を豊かに、この場面にどんなウィンドチャイムの音がマッチするのかをみんなで考えてみましょう。
Cの 3 小節前、4 拍目からのタンバリンのロールは、振ったり指で擦る他に奏法がもっとあるはずですよね。それは私達もいつも知りたいと思っている事で、まずはみんなが知っている王道のテクニックを使って試してみるという事ですよね。振ってみた。「ガッ」ってやってみた。「シャッ」ってやってみた。その時にそこの拍にはまって、頂点がしっかりとフォルテになったからピッタリかって言った時に、タンバリンの奏法は常にこれでいいのかっていうことを考え始めます。それは楽器を替えるとか、テクニックを変えるっていうことももちろんありますけど、この音色がこの曲のこの場面で出てくる意味は何だろうって考えた時に、曲の意味から考えた音色感をこちら側が得なくてはいけないですよね。そうするとさっきのバナナで演奏するというのは、別にバナナじゃなくても良いのであって。そうやってメンバーたちで一生懸命、なるべくたくさんのアイデアを面白がって出していく。妄想していきながら 1 つの音を作っていく。この場面に対して親指でやった方が良いですよっていうのは分かりますけど、親指でやると少し暴力的になってしまうかもしれませんよね。結果親指に至るかもしれないし中指に至るのかもしれない、そこを一生懸命考えるきっかけになると思うんですね。ウィンドチャイムやこの場面のタンバリンは、正直どうしていいかわからないですよね。でも実はそこがスタートです。 自分たちでそれを探してみるっていう事が何より楽しい事なのです。仲間達と色々な奏法を試してみて、みんなで見つけ出した音に誇りと自信を持って楽しんで演奏してみてください。
E 4 小節目の小太鼓は 16 分音符ですが、5 小節目からのリズムが主なのでテンポが 126 になっても主導を取るわけではなくて、サックスからトロンボーン、チューバへ移行していく。その流れを邪魔しないということが大切です。主役はメロディなのでテナーサックス、アルトサックスのフレーズから、1 つの流れを作っていくことに対して、大太鼓は幅を広げていくように立体感を作る役割があると思います。リズムだけではなくて、レンジの幅や低い音、高い音の幅をずっと広げていく事に、大太鼓の役割があります。
48 小節目と 49 小節目のティンパニのソロは私だったら少し躊躇しますね。思い切りフォルテッシモで行けないというか、音楽が綺麗なので闘いのシーンっていうわけではないですよね。例えば戦ってくださいみたいなアプローチで来られると、ちょっと、どうしようかなっていう気持ちになりますが、やっぱり流れが早くなっても、激しく何かを作っていくというよりは、流れとレンジの幅が広がっていくっていうことを考えると、このソロの美しさをイメージしながら 16 分音符が演奏できると良いと思います。

2番「ザ・ガーズ」/ 星出尚志
頭からのスネアドラムはロール奏法が多用されていますね。スネアドラムの楽譜にテヌートはついていませんが、管楽器にはテヌートがついています。これはもちろん管楽器に合わせてテヌートを意識するべきなのかなと思います。タイではないので叩き直す時になるべく間隔を開けないということがテヌートという事にになります。他の管楽器の様にタンギングで繋げるのではなく、なるべくその音をいっぱいまで伸ばすというイメージが大切だと思います。ですから、アクセントは付けずに同じ音量になると良いと思います。

A 7 小節前からのティンパニについて、曲全体を通して重々しい様で重々しくないと思います。私のイメージとしては重々しいというより深刻な曲だと思います。 とはいってもそんなに深刻になるわけではなくて、「ソロ!」という気合の入れ方ではなくて、コントラバスやチューバも一緒にやっているような気持ちで、いわゆるフレーズの流れの中でちょうどいい位の音量で良いと思います。ただ 1 人だとちょっと足りませんので、そこにチューバとコントラバスの分を自分で足したぐらいの気持ちで。そのフレーズと関係ないソロではなくて、流れの中に「ティンパニが 1 人で 3〜4 人分ちょっとやってます」のような感じで気楽に脱力して演奏すると良いと思います。逆に言うと力強くハッキリ演奏する方が簡単ではありますよね。でもそうではなくて、決めるのではなくてあっさり次へ流れていくような感じで演奏すると良いと思います。

Bからのスネアドラムは、フラムが入る事によって音に厚みが出ます。フラムなしでも全然おかしくはないけれども、あえてフラムを入れることによって、明るい音でありつつ重みや厚みが出てくる。 なので、軽く演奏するというよりは、音を重くするために入れている様な感じがします、フラムを入れることで、重厚さを表現していると思って演奏してみてください。

Cからはシンバルと大太鼓が裏拍になりますので、頭の音に重量感が欲しいですね。
これも威風堂々みたいにブリティッシュ風の音楽みたいなものを意識しているように感じます。威風堂々もそうですが、裏は裏で前に行きたくて、表は表で前に行きたいんです。このようなマーチは、どちらかというと前に行くというよりは歌いたいと思うんですね。歌いたいものと前に行きたいものがぶつかり合っていくことで緊張感が生まれます。ですがこの曲ではなるべく緊張感は生まないようにしたい所です。あまり裏の人が重く前に行くとリズムが結構な重量になってしまって、前に行く推進力が出すぎてしまいます。出過ぎないのも大事なことですが、このように楽譜に書いてある以上、その様なことを意識すると、前に行きたい人と歌いたい人のチグハグさがぶつかって、結果的に緊張感が生まれてしまいます。そうならないように、表拍と裏拍の人たちは「緊張感が少ないマーチ」というものを目指して練習するとよいと思います。また、このチグハグさを面白がって演奏出来たらさらに楽しくなると思います。
スネアドラムのスティックについては、本当に色々な種類があるので、皆でいろいろ試してみてください。この曲は有名なスーザのマーチとは違って、割と落ち着いたマーチですので、 前に前に歩かせる様な軍楽隊的なマーチとは少し違いますね。威風堂々と同様に、この曲はどちらかというと歌いたくなるようなメロディーの感じですよね。スーザのマーチは歩きたくなるというか、身が引き締まるとか、気持ちがキュッと締まるとか、そのようなイメージですよね。でも実は歩くテンポって結構早いんですよね。歩くようなテンポ感ではなく、大太鼓とシンバルが軍楽隊のように、「右左右左!」という様なリズム感を出していくわけではないっていうのが、この曲の面白い所だと思います。軍隊的な行進をするマーチではないという事は、やはり自然とバスドラムのマレットは少し柔らかくなりますよね。要するにお尻を叩いて「行け行け!」という音楽や音ではないということです。ですから、そういう意味では、命令系なテンポ感がやはりマーチにはあるので、マーチに聴こえてくるんだけれど、少し柔らかかったり、少し大きめだったり、そのようなイメージに近くなっていくのかなと思いますね。
Eからの大太鼓はまさに今の話のように「歩け歩け」っていう音よりは、「歌え歌え」と
いう感じですよね。その先のGもフォルテですが感覚は同様です。
最後の 4 小節間はティンパニとスネアドラムがソリスティックに動いています。この部分は曲の終わりでもあるし、少し盛り上がった感じはあるのですが、「アクセントがいっぱいついているから強くて激しい音!」ではなくて、マーチはマーチでもこの曲はシンフォニック的な印象が強い感じだと思いますので、この様な終わり方の時は痛い音ではなくて、ティンパニも小太鼓も大太鼓もシンバルも 1 パート 4 人ずついると思って少し気楽に演奏してみてください。例えば 1 パート 4 人で演奏をすると、すごくふっくらした演奏になります。ふっくらとして、尚且つ豊かな響きになりますよね。実際は 1 人で演奏しているけれども、気持ちは 1 パート 4 人で演奏をしているような気持ちで。それぞれの楽器 4 人が、4×4 になっている感じの音の作り方だと、上手くまとまるのではないかと思います。

3番「あつまれ おもちゃのマルチャ!」/ 伊藤士恩
この曲は明るい曲調ですので、スネアドラムのチューニングは比較的高めで響き線の
調整も張りめで乾いた音をイメージして音作りをしてみましょう。
スティックについてはメイプルなど軽いスティックを使うと良いと思います。私はメイン
でスネアドラムを演奏していた頃から現在まで、軽いスティックを好んで使ってきました。今は硬く重い素材が好まれる事が多いようですが、私はスティックの重さで音をコントロールすると言うより、自分の手や腕の重さで音をコントロールする考え方なんですね。この考え方だと軽いスティックの方がすごく使い勝手が良いんです。「軽いスティックだと手が震えませんか?」とよく聞かれるのですが、軽いから震えるという事はありませんね。むしろ重い方が勝手にスティックやマレットが落ちてしまいます。手や腕でコントロールする音色が好きですから軽いスティックを使います。 落とすこと自体もコントロールするという事なので、それが自分の音になるっていうのは自負としてはありますが、スティック任せにしたい場面は沢山あります。何故なら、私の考え方ですが、スティックは手の延長線だからです。その時その時で使う楽器が変わったりした時に、落とすだけだと楽器に対してのアプローチの時に、スティックの音がしてしまうんです。どちらにもメリットデメリットはあります。学生時代に重めのスティックをメインで使用していた時期もありましたが、そのように考えるようになってからは、軽いスティックで音色を作るっていう作業をずっとしていましたね。ティンパニマレットについて、実は私の使っている KATO のティンパニマレットは JPCで売っている KATO のティンパニマレットより竹柄が細めなんです。それはさっきのスティックの話と同じで、軽いマレットを使い、自分で音作りをしたいからです。それと、意外と知られていませんが、KATO のティンパニマレットに付いている赤いグリップチューブがグリップエンドに付いてる事にもちゃんと意味があって、グリップエンドにグリップチューブを付ける事でマレットの後ろが重くなりますよね。なので、少しコントロールして軽く落とすだけで良い音が出るんです。でもこれはティンパニマレットの後ろが軽いと上手くいきません。グリップチューブがグリップエンドに付いていると本当に最後の最後までバチが打面に当たりません。さっきの話ではないですが、マレットの頭が軽くなるから音量が出ないけれど、手や腕を大きく使って演奏する事で音量を補うようにすると、このグリップチューブの意味が出てきます。
次に、この曲はマーチですので全体的に刻みが多いのですが、 例えばEの 1 小節前はフォルティッシモで決めて、フォルテでまた始まります。この場面に限らず他に木管に綺麗なメロディーがあったり、役割分担っていうのもあるわけです。なので、そういった事を含め考えると、いろんな考え方ができると思います。あまり打楽器で決めようっていうのは考えなくてもいいと思いますが、打楽器で決める場面が来た時にどのように演奏するかという話を指揮者やメンバーと話し合う必要があると思います。Eの 1 小節前も決めはあるけれど曲は終わらないじゃないですか。なので、その決めを曲の終わりの音にしないという事が大切です。
Trio の後、Gからはグロッケンが入ってきます。管楽器と同じメロディーですので、管楽器と同じように歌う事が非常に重要です。管楽器とアーティキュレーションを揃えるためには、まずピッコロやフルートなど同じメロディーを演奏している楽器を吹いてみましょう。音は出なくても良いんです。息使いやアーティキュレーションを一緒に考える事、それはすごく素敵な事ですよね。逆に、同じメロディーを演奏しているフルートの人にグロッケンを叩いてもらいましょう、そうするとフルートの人たちがフルートのイメージでグロッケンを叩くんです、これはスネアドラムでも同様でトランペットの人がトランペットのイメージで小太鼓を叩きます。打楽器を演奏する人、トランペットを演奏する人で同じリズムでもリズムの感じ方がちょっと違っているかもしれませんよね。私達がそのような時に感じるリズムは実は平面的なんです。でもトランペットやフルートを演奏する人達はそのリズムを非常にメロディックに演奏するんです。それだけで何か違いが発見できる。ですから、自分たちが管楽器を吹いてみることで、管楽器の人達の気持ちをちょっとでも理解しようってことと、管楽器の人達にグロッケンを叩いてもらって、仲間がどのようにメロディーを演奏するのかお互いに聴いてみると良いと思います。
Jのアウフタクトにある、合わせシンバルのソロについては、とにかくかっこよく! た
だその後に八分音符がありますよね。ここで注意して欲しい事が、音を止める方に意識が行ってしまうと失敗してしまうんです。「ジャーン!」という音と次の「ジャッ!」という音を並べて演奏するのがすごく大変ですが、やはり前の「solo」と書いてある音の方に意識をおくべきではあって、変な話、 ソロを演奏した後に次の音を演奏する瞬間が遅れてしまって迷惑をかけてしまう様な事があるとします。だったら 1 発目のソロに集中して、2 発目はやらない方が良いって思うぐらいです。全部の音をしっかりと演奏する事ももちろんとても大切な事ですが、1 つの音を大事にすることによって、もう 1 つの音がおろそかになってしまう事に対して、両方が中途半端になるぐらいだったら私は悪いことではないと思っています。どっちかを捨ててでもいい音を作るという事で気は少し楽になると思います。一旦、八分音符を演奏しないでソロの音だけにしてみる。納得のいくソロの音が出せるようになったら八分音符も演奏してみる。こんな練習方法も有効だと思いますよ。でも、この様なリズムって、ある日突然出来る様になったりするんです。どちらかをすごく大事にしようっていうことを大切にして、まず振り切って考えてみても意外に面白いですね。

Mの 2 小節前から装飾音符がティンパニと小太鼓にありますが、ここはしっかりと合わせましょう。小太鼓の装飾音符もティンパニと同じ手順で 2 つをシングルでやると、効果がティンパニとピタッと合う可能性が高くなるから試してみてください。
Mの後のティンパニについて、4拍目の裏にはアクセントがついていませんが、アクセント以外の音が埋もれない様に演奏しましょう。右手よりも左手のほう(2つ目の音)を強くするっていう感覚でやると、自ずとフレーズは綺麗に聴こえる様になります。
4番「管楽器のためのフィナーレ」/ 伊藤康英
曲のイメージは、とてもかっこいいですね!全体的にすごくテンポが速いようなイメージがしますが、非常にメロディックであるし、そうは聴こえないかも知れないですが非常に落ち着いた曲であると感じます。細かいメロディーというか、全体の流れとしてはすごく大きい流れがあるというイメージがあります。それ程速い曲ではなくて 4 拍子というよりは大きな 2 拍子の曲ですよね。その中にいろいろ細かいパッセージはありますが、全体としてはやっぱり大きい流れをイメージするのがすごく大事だなと思います。

7 小節目のティンパニとバスドラムにスフォルツァンドがありますが、管楽器のサウンドやハーモニーを生かすために同じような立場で演奏しましょう。イメージとしては管楽器がスフォルツァンドを短く吹く感覚で、でもアクセントじゃない。打点ではなくて、管楽器はタンギングで表現しますよね。同じ立場になって考える時には打楽器の視点だけで考えないことが大切です。全体のサウンド、そのスフォルツァンドの部分のどれぐらいのところに自分の役割があるのか。打点というのは他の楽器にはない打楽器特有の武器でもありますよね。ティンパニも叩いたら、「ドンッ!」ですが、その後に音程が付いてきますよね。他の楽器はラはラだし、ソはソって吹きますが、ティンパニもソって叩いてはいるんだけれど、最初に「ドン!」っていう打音がありますよね。その「ドン!」っていう打音がトゥッティの核になっているんですね。オーケストラでも吹奏楽でもティンパニが入っているというのは、純粋なハーモニーを乱してはいるんだけれど、その打音が入ることで全体が「ピシャッ!」と締まるという効果があります。管楽器がパッ!と出したスフォルツァンドの形を整える。形をシャープにしたり、形をまろやかにしたり、どのような形に整えるかという所に私達の役割があります。ティンパニと大太鼓の音の中に他の楽器の音がしっかり埋まって入ってくるように。核の部分ですから、適切なバランスを耳で判断することが大切です。
Bからのトランペットと小太鼓も、小太鼓が主役ではなく、「トランペットと小太鼓」の様に、異なる楽器で1つのフレーズを演奏していることを意識しましょう。実はトランペットと小太鼓は相性が良いんですね。トランペットのリズムを明確にするために小太鼓と
いう楽器はすごく大切な存在です。ですが小太鼓が目立ちすぎてしまうと、それはフレーズではなくリズムになってしまいます。この場面はリズムでもなんでもなくて効果的な響きであると僕は思います。リズムを演奏するのではなくて、響きを演奏するようなイメージを持つと良いと思います。

30 小節目以降のスネアドラムは、アクセント以外の音符もしっかり聴こえる様に演奏するようにしましょう。アクセントというのは、あくまで元にある音に対してつけるもので
あって、アクセントをつけて他の音を引くのではないと言うことを意識して練習してみま
しょう。

Fのサスペンドシンバルは、色々なマレットをバンドで試してみてください。例えば布が巻いてあるとか、革が巻いてあるようなマレットというよりは、マリンバの硬いマレットでしょうか。 バンドのみんなで多数決を取ってみるのも良いですね。打楽器奏者の一存ではなくて、他の楽器の人に今から 1 番のマレット、2 番のマレット、3 番これ、4番これ、どれがいいですか?という作業を順番にやっていくと楽しいですし、自分たちの音になります。そこにトレーナーがレッスンに来た時に、このマレットで演奏しなって言われちゃうと気持ち的には少しムッとしちゃいますよね。バンドとしては簡単に言うなとか思うかも知れないですけど、トレーナーにいわれたマレットを試してみたら意外といいねってなるかも知れませんよね。その「いいね」は、トレーナーに言われて、じゃあこれ使いますだけではなくて、「やっぱりトレーナーさすがだね」「このマレットいいね」「どう思った?」ってなったとしても、それは最初に自分達で考えたからですよね。また皆で考えることも楽しいし、ここでまた 1 つ意味が出てきますので、まずは是非皆で色々試してみてください。
H 11 小節目のトムトムはマレットと指定がありますが、ティンパニマレットで良いと思
いますよ。要するにソフトマレットという事だと思います。私はマレットって書いてあったらそうやっちゃいます。シャフトが木のマレットだったらスティックとそんなに感覚が変わらないので。楽器についてもシングルヘッドのトムトムだと少し音が薄いと思うので、ダブルヘッドのトムトムを使うと良いと思います。ヘッドはコーテッドでジャズドラムの様な感じのヘッドが音の発音が分かりやすくなりますので合う感じがしますね。
I の 2 小節目からティンパニと小太鼓の刻みがありますが、推進力が欲しい所ですね。推進力を出すためにはよく「煽りなさい」とか、そのような言葉を聞くことがありますが、煽るというよりは前へ行く意識が大切だと思います。例えばドラムセットとベースが一緒に「ワンツースリーフォー」ってカウントして始まるのは煽っている事にはなりませんよね。煽るというのは、聴こえているものより先に行こうってすると煽っているんですけど、聴こえてくるものはちょっと無視して、キープしていこうっていうのは、煽っているというよりは、強く押しまくるのではなくて、平和的な押しまくりだと思います。そん
な意識で演奏すると良いと思います。
140 小節目からのティンパニのソロですが、メロディーは白玉が多いじゃないですか。
コラールのような、そういうものに対して、リズムはこうやってけしかけてきて、すごく細かくて。私はショスタコービッチやプロコフィエフの曲に似ている印象を持っているのですが、プロコフィエフにはこの様な場面が沢山あります。その中で大事なのは、メロデ
ィー自体が揺るがないということなんです。それを周りからたきつけてくることはいっぱ
いありますが、ゆっくりでありながらゴージャスなメロディ。その真ん中にあるものの力
強さというか、それを受けてティンパニソロが出てきて横からチャチャを入れているんですが、王道のメロディーには負けてしまいます。王道に負けるというより、王道に勝っちゃいけないということなんです。すごく効果的に盛り上げているのだけれど、それはあくまで王道のメロディーを盛り上げることであって、自分が主役ではないんですよね。その 1 歩後ろから「どうだー」って言っている役割っていうのかな。自分の立ち位置が 1 番前なのか、3 番目なのか 6 番目なのか、っていうのはすごく大事な事です。音楽の表現としてそれはどの楽器も同じです。ただフォルテを「ダーッ!」と吹くのではなくて、自分が今 1 番前にいる時はやっぱりしっかり 1 番前として演奏しなくてはいけないし、3 番目なのに 1 番前に行ってしまうとそれは時に邪魔になってしまったりします。この様なティンパニのフレーズは邪魔になりやすいんです。これもテクニック的に融通が利かないから、どうしても 1番前に行ってしまう。あくまで盛り上げているけれど、主役ではないという事が意識として大切です。このバランス感覚が打楽器奏者ってすごく大事で、いつも前面に出ない。結局分かるのではないけれど、私はどうやってそれを分かろうとしているかっていうと、演奏するときに他の楽器が聴こえているかを考えます。曲として聴こえなくて良いところは自分の音だけで良くて、それはつまりティンパニが 1 番前ということです。しかし実際その様な場面はほとんど無くて、ほとんどが誰かの音を聴いていて、そこに合わせて演奏する。さっきの話の様に煽るとか何でもいいんですけど、でも聴こえているということが前提です。時々指揮者から「そこを聴かないであっちを聴いてくれる?」と指摘を受けることがあります。そうすると役割が、私はここだと思っていたけれど、こっちの役割なんだなって、それは指揮者との打ち合わせで色々な事に気付けます。どこを聴くかによって、自分の演奏する大きさとかタイミングなどが決まってきます。実はこれはしい話ではなくて、他の演奏がちゃんと聴こえるかどうかという事だけなんです。もっと言うとほかの楽器の音が聴こえている時に、それがちゃんと自分の中で歌えていたり、ハーモニーがわかっているっていう事が大切なんです。聴きながら演奏するという事はやっぱりすごく大事だと思います。特に最後のティンパニは他の楽器をしっかり聴いていて、自分の音を聴いてもらえているっていうタイミングや音量。他の人もある意味テンポキープはすると思うんですが、そうするとこのティンパニというのは、管楽器と綺麗にハモっていて、綺麗に進んでいれば、その中でこの人たちは遅くなってしまうんです。それでも遅くなれないような、綺麗なリズムのつながりを生んでいく事を考えながら演奏すると良い演奏につながると思います。

■植松 透プロフィール

NHK交響楽団首席ティンパニ奏者。東京都出身。N響海外派遣員としてベルリンに留学、R.ゼーガースのもとで研鑽を積む。オーケストラ活動の傍ら国内外の音楽祭、ワークショップにも多数参加。ソリストとしても武満やグラスの作品などN響と度々共演、N響定期公演年間ベストソリストにも選出された。
先日も愛知室内オーケストラとウォーカー、ドアティの打楽器協奏曲(共に日本初演)を共演。また幼児と音楽の関わりを打楽器の視点から捉える研究も長年続けており、主宰する「たいこアンサンブル・トムトム」では全国の幼稚園や特別支援学校、被災地などを訪れ、子どもたちとの音楽遊び活動を展開している。ピタゴラスイッチ、ムジカピッコリーノ、音楽ブラボーなどETVの教育番組にも数多く出演。現在は埼玉県ときがわ町の山あいに居を移し、豊かな自然の中で地域の人々や子どもたちとの交流を通して楽しく心豊かな音楽作りを日々模索している(稲作もしています…無農薬・手植え・手刈り!)。
執筆者:パーカッション・シティ 本山、川原
取材協力:NHK交響楽団首席代行ティンパニ奏者 植松透
編集:JPC MAG編集部
