世界の打楽器部屋から
世界の打楽器部屋から vol.28|ドイツ・チューリンゲン・ワイマール 星あゆみ
世界各地で打楽器人生を謳歌する日本人にフォーカスした人気シリーズの28回目。
今回はドイツ各都市を巡り、現在ハノーファー音楽演劇大学大学院
ドイツの楽団事情や各都市の魅力を感じながらお楽しみください。
現地情報
- 国:ドイツ
- 地域:チューリンゲン州、ワイマール
- 生活言語:ドイツ語
- 現地通貨:ユーロ
- 日本との時差:夏7時間、冬8時間
- 現在の所属: Deutsches Nationaltheater und Staatskapelle Weimar アカデミー生
みなさんこんにちは、初めまして!星あゆみと申します。現在私はドイツで大学院生をしながら、オーケストラのアカデミー生をしています。ドイツでの生活や留学についてのあれこれを、今までに暮らして来たハノーファー、ゲッティンゲン、ワイマールの3都市の様々な違いなども含めて、ご紹介していこうと思います!
音楽留学スタート:ハノーファー
ニーダーザクセン州にあるハノーファーという都市で、私はドイツでの初めての音楽大学院生生活を始めました。ドイツでは13番目に大きい都市で、比較的都会かなと思います。駅前はかなり新しい建物が多いのですが、少し進むと旧市街があり素敵な街並みが広がっています。
私の通っているハノーファー音楽演劇大学では、打楽器のクラスは音楽学部と教育学部に分かれており、音楽学部にはソロ志望のクラスは無く、オーケストラ奏者志望のクラスのみになります。大学では、Andreas Boettger教授やErich Trog先生(ドイツフィルハーモニーベルリンの元首席ティンパニ奏者)などから、主専攻、ティンパニ、ラテンパーカッション、ドラムなど週に4日もレッスンを受けることができました(Boettger教授とErich先生は現在はもう退任されて、25年の4月からは新しくHenrik Schmidt教授が着任されます)。レッスンの他には大学オケ、ブラス、オペラなど、合奏にもたくさん参加し、中でもホールにオケピがあってフルのオペラをできた時は感動しました。ハノーファーの大学院生、特に菅打楽器の学生は基本的にレッスンと合奏授業だけで単位が十分取得できるので、演奏関係だけに集中できるのがとてもありがたいです。
初めてのオーケストラ所属:ゲッティンゲン
大学に入学して約8ヶ月程度経った頃、ゲッティンゲン交響楽団(以下GSO)のインターンのオーディションを初めて受け、幸運にも合格することができました。
ここで、ドイツのオーケストラのオーディションについて少し説明します。ドイツのオーディションは基本的に招待制で、応募後に招待状をもらった人だけが参加できます。そしてこの招待状をもらうにはさまざまな条件があり、例えば正団員のオーディションは、ほとんどの場合オーケストラへの所属経験が必要です。そのため、まずはアカデミー生やインターン生としてオケに所属して経験を積むことから始めることになります。アカデミー生は、オケでの演奏活動に加えて、団員からのレッスン、アカデミー生だけのコンサートや模擬オーディションなどがカリキュラムに含まれますが、インターン生は、コンサートや模擬オーディションはないところが多いのではないかと思います。両方とも一応給料をいただけるので、とてもありがたい制度です。
さて、本筋に戻ります。ゲッティンゲンは小さい街ではあるものの、とても歴史が古いゲッティンゲン大学がある大学都市で、学生が多く住んでいます。そのためか新しく可愛いカフェが本当にたくさんあって、街の中心部も全て旧市街のためすごく可愛い街並みになっています。
GSOはドイツにあるオーケストラの中ではBオーケストラ(オーケストラの規模によってA〜Dに分類されます)に属し、その中でも団員数は70人以下と少し少なめです。ゲッティンゲンにある市立ホールや劇場でのコンサートのほか、周辺の都市にみんなで一台のバスに乗ってコンサート遠征することも多くありました。団員みんなが本当に優しく家族みたいで、楽しくて温かい思い出と共に素晴らしい経験や学びをたくさん得ることができました。
世界遺産の街:ワイマール
アカデミーのオーディションに無事合格し、ワイマールで新生活を始めたのは去年の9月。少しずつオケや新しい環境に慣れてきました。ワイマールはゲーテやシラーを代表とする古典主義の中心地として栄えた街です。「古典主義の都ヴァイマル」として、ゲーテの旧宅や教会、公園や図書館など、計11点もユネスコの世界遺産に登録されています。私がアカデミー生として働いている歌劇場も世界遺産の一つで、200年以上もの歴史があり、オーケストラ(Deutsches Nationaltheater und Staatskapelle Weimar 以下DNT)に至っては世界で最古といわれ、500年以上の歴史があります。
DNTには現在100名以上が在籍し、Aオーケストラに分類されます。DNTは歌劇場専属のオーケストラなのでオペラの公演が主軸です。オペラは公演期間が非常に長く、1ヶ月に何回かの頻度で何ヶ月にも渡って定期的に上演されます。それに加えてシンフォニーや映画音楽などのオーケストラのみのコンサートが月に1〜2回度程度加わります。色んなジャンルの曲をプロオケの中で演奏することで、毎回違った学びを得ることができる今の環境は、プロを目指している私にとって本当にありがたいです。
最後に
かなり長くなってしまいましたが、いかがでしたか?ドイツの魅力が皆さんに伝わっていれば幸いです。ドイツはオーケストラ奏者を目指す若者の育成、という点においては本当におすすめな国ですので、留学を考えている方がもしいらっしゃったらぜひ!Youtubeでも本当に少しずつではありますがドイツでの生活の様子を載せているので、興味を持っていただけた方がいらっしゃいましたら覗きにきてくれたら嬉しいです。ここまで読んでくださって本当にありがとうございました。Auf Wiedersehen!
執筆者: 星 あゆみ
編集:JPC MAG編集部