世界の打楽器部屋から
世界の打楽器部屋から Vol.24|アメリカ合衆国 コネチカット 増山穂香
世界各地で打楽器人生を謳歌する日本人にスポットを当てた人気シリーズ。 今回はアメリカ、ハートフォード大学ハートスクールの修士課程を修了され博士課程に進まれる増山穂香さんにご寄稿いた だきました。
※この記事は2023年7月発行「JPC 177号」に掲載されたものです。
●アメリカでの学生生活
私はつい先日まで、アメリカ、コネチカット州ハートフォードという都市にある、ハートフォード大学ハートスクールの修士課程に在籍していました。5月上旬に全てのプログラムを終えて大学院を修了し、今は約3ヶ月半に及ぶ夏休みに当たります。8月末からは同大学の博士課程に進学する予定です。
今回は、私が通うハートスクールの打楽器科のプログラムを紹介したいと思います。まずは、打楽器アンサンブル。学部生と院生混合のグループ(The Hartt Percussion Group)と院生のみのアンサンブル(Hartt Graduate Percussion Ensemble)のリハーサルがそれぞれ週に2回ずつあります。私たちが演奏するレパートリーは純粋に打楽器のために作曲された作品のみに限定しており、その幅はジョン・ケージのサード・コンストラクションのようないわゆるクラシックな作品から、新作アンサンブルレパートリー(So Percussion や他のアメリカのパーカッショングループの委嘱作品)まで多岐に渡ります。
また、ハートスクールにはスチールパンバンドもあります。打楽器科の生徒は年度が始まる際に教授から担当の楽器を割り当てられ、その楽器を1年間かけて習得します。私は修士課程の2年間、ダブル・テナーというパート(オーケストラで言 うと第2ヴァイオリンに当たります)を担当していました。演奏するレパートリーはトリニダード・トバゴ の伝統的な音楽、カリプソとソカがほとんどです。
週4回の打楽器アンサンブルのリハーサルではスチールパンのリハーサルをしたり、打楽器アンサン ブルのレパートリーを練習したりと充実しています。
続いて個人レッスンについても触れたいと思います。打楽器科教授のBen Toth氏の個人レッスンが週に1回あるのに加え、ハートスクールにはゲストティーチャー制度があります。
この制度は異なるジャンルのワールドパーカッションに精通する6人の先生方が1年間の任期で週に1回教えに来てくださるというものです。一対一での個人レッスンと打楽器科全体でのグループクラス があります。一対一でのレッスンではテクニックを学び、グループクラスでは先生と一緒に演奏することによって、音楽のスタイルを学びます。私はこれまで、ミドルイースタンドラミングをShane Shanahan氏、アフリカンドラミングをJoe Galeota氏, キューバン、ヘイ シャンドラミングをJohn Amira氏と Marcus Kreiger氏から学びました。
今後の博士課程の3年間ではさらに、ブラジリアンドラミングを Rogerio Boccato氏、ジャズヴァイブラフォンをTed Piltzecker氏に学ぶ予定です。この制度はアメリカ国内の音楽大学を見ても 非常に珍しいものなので、このような貴重な機会に恵まれとても幸せです。
●アメリカでの音楽活動
留学生として学生ビザでアメリカに滞在している為、学校外で演奏活動を行うことは難しいのが現状です。しかし、OPT(Optional Practical Training)という制度に申請をすることで、合法的に演奏活動をするという方法があります。私は5月初めにOPTを取得し、夏休みの間、学業の一環として学校外で演奏活動ができる許可をもらった為、教会や地域のコミュニティオーケストラ、ミュージカルプロダクションなどでの演奏の機会を広げています。7月末からはPlayhouse on Parkというローカルシアターで上演されるBandstandというミュージカルにドラムセットで参加する予定です。
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増山穂香 プロフィール
東京音楽大学卒業。ハートフォード大学ハートスクール修士課程修了。同大学博士課程にフルスカラシップ受給生として進学予定。オフブロードウェイミュージカル作品After Happily Ever Afterサブパーカッショニスト。これまでに打楽器、マリンバを内田真裕子、杉山智恵子、菅原淳、神谷百子、柴原誠、Ben Toth の各氏に師事。ワールドパーカッションを石川武、Shane Shanahan 、Joe Galeota 、John Amira、Marcus Kreigerの各氏に師事。
お知らせ
インスタグラムに学校での日常を投稿しているので、アメリカの音大生活に興味がある方は是非覗いてみてください。 アカウント:honoka___m (アンダーバーは3本です!) また、Steve Weiss Music (アメリカの大手打楽器ショッピ ングサイト)のYouTube チャンネルにて、ハートスクールの 打楽器科のプログラムが詳しく紹介されています。タイトル はEpic Percussion Gear Tour ‒ The Hartt School です。 こちらも良かったら是非チェックしてみて下さい。
執筆者: 増山 穂香
編集:JPC MAG編集部