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Speed Remastered!帰ってきたスピードキング Ludwig Speed Series Foot Pedal L203
2020 年のNAMM SHOW での発表から待つこと約1年…
待ちに待ったリマスター版スピードキングL203が日本市場に投入されました!!
今回はそのSpeed King を本誌連載中” 太鼓奇談” でおなじみの土田“ つっちー” 嘉範氏のレビューと共に、ご紹介!!
※この記事は2021年4月10日発行「JPC 168号」に掲載されたものです。
■ 新旧スピードキングを知り尽くした“つっちー”さんによるレビュー
さてさて、いきなりレビューページにお邪魔しますは、太鼓奇談で毎度おなじみ流浪の太鼓持ち、つっちーです。今回は下町のジェダイ・マスター西尾さんよりスピードキングのレビューを書けとオーダーがありましたので、僭越ながら書かせて頂きます。
フォースとともにあらんことを…w
さてこのスピードキング(以下スピキン)、言わずとしれたラディックの超定番ペダルですね。
最初にこの名前がつけられたペダルがデビューしたのはラディックの創業者、W.F.LUDWIGさんが1937年に開業したW.F.L.Drum Companyにおいて、最初の製品がこのスピキンだったということで、2021年現在において84年目に突入する超ロングセラー製品なのです。
とは言え、そんなスピキンも2014年に一度販売終了の憂き目に遭います。
その時は「あぁ、また一つ歴史が閉じていくのか…」とがっかりしましたが、僕の手元にはヴィンテージのスピキンが20台ちかくあり、一生分、いや、十代先までスピードキングには困らないし、このスピキンたちをリペアするのを余暇の楽しみにしようと思っておりました。
ところが!2020年の南無ショー、いやそれじゃ仏壇の展示会だよ、NAMM SHOWでなんとスピキンが発表されたというではありませんか!
高鳴る胸の鼓動を抑えながらネットであれこれ検索すると、そこには光り輝く新しいスピキン、そう、「シン・スピキン(庵野風)」があるじゃないですか!一人で勝手に盛り上がっているところに友人がなんと現地でそのシン・スピキンを手にとってインスタにアップしているという…僕は思わず彼にメッセージを送りました。「そのスピキン持って走って逃げろ、そして俺のところに持ってきて」とw
画面の中で光り輝くシン・スピキンのルックスは昔のまま、しかしよ~くみると細かいところが微妙に変わっているぞ…と目を皿のようにしてあらゆる写真を見比べました。
そこから実際手に入れるまでほぼ一年…。
長かったです。しかし、今僕の手元にはドラムシティで手に入れたシン・スピキンがすやすやと寝息を立てて…はいませんが、しっかりとカンヴァスのポーチに入って大事に保管されております。
実際、シン・スピキンはどんなペダルなのか?昔のスピキンとどう違うの?
ここからはそんなことお話してみたいと思います。
まず、先にも言ったように基本的なデザインや機能は全く変わっていません。
しかし、可動部分にきめ細やかなアップデートが施されています。
まず、ヒール部分のヒンジにベアリングが入って、かなりスムーズに、そして頑丈になりました。古いスピキンの「キコキコ」はヒールから発するノイズでもありましたね。
そして、これもスピキン独特の機構ですが、ヒールプレートが2wayとなっており、ペダルボードのうらにあるネジとプレートで切り替えができるようになっており、ここのネジがマイナスから角頭に変更されています。古いスピキンのここのネジがよく紛失してしまっていて、僕はこのネジを虎ノ門にある三和鋲螺という老舗のネジ屋さんに買いに行きました。
そして次はアンダープレート。ヒールプレートの裏側にはマジックテープが貼ってあり、カーペットとの密着度を高めてペダルそのものがズレないようになっていて、アンダープレートには最近の流行りなのか、ドラムキーが装着できるようになっています。ここは好みが出るところ。便利で好きというひとも、いや、ここはあえてオールドスクールにこだわるぜ!と取っ払うのもアリです。
フープクランプも頑丈で、ウッドフープを傷つけないようにラバーが貼ってあり、フープに貼るラバーも同梱されています。そして、スピキンあるあるネタで、フープクランプが深いため、ビーターのシャフトがキックのヘッドにあたってしまうという問題が昔からありました。日本ではみんな割り箸を挟んで、その場をしのいでおりましたが、シン・スピキンではラバー・スペーサーが付属しています!これで割り箸ともおさらば!実際いくつかの国産セットで付けてみましたが、どのメーカーも問題なく装着できました。
次はカムとビーター。僕がスピキンを愛する最大の理由は「ビーターがペダルのど真ん中にあること」です。これにより、素直でパンチのあるサウンドが得られると思っています。ビーターを固定するネジも角頭に変更、フットボードとカムを繋げるリンクプレートも頑丈な感じに見えますね。
そして肝心の踏み心地は…もうなんというか、全くノイズのない、スムーズでスピーディな、とろけるような踏み心地なのです。
スピキン特有のフエルトビーターも健在で、僕は箱から出したまま、スプリングテンションも変えずに使っています。僕が13歳のときに手に入れたスピキンと並べると、この眺めだけで飯は食えるわ酒は飲めるわで非常に幸せな気分になれます。お好きな方はぜひ一家に一台オススメですよ!
■ 古くて新しいもの
※ Text:ドラム・シティ スタッフ 木澤
この記事をまとめている際、私は、これまで「Speed King」というペダルがどんな機材なのか、聞いた事がある程度しか知らず、実物を見たことや試奏したこともなかったことに気づきました。
平成生まれの20 代。おそらく、若い世代に入れて頂ける私は、どこか自分の中で、絶滅した動物や「ツチノコ」のような生物なのでは?なんて思っていた時期もあります。調べてみると、前モデルのスピキンの生産終了が2014 年と、まだ10 年も経っていなく、古代文明やオーパーツの部類ではない事がわかりました。
スピードキングが店頭に並ぶ事となり、ところどころアップデートされてはいますが、こいつは紛れもなくスピキンで、やっと実物を拝めた事に少し感動しました。
ですが、やはり「これまで」のスピードキングは知っておきたいし、触っておきたい。
一度は手にして、じっくりと観察したいと思います。
今回のように、これまで名器と呼ばれてきた機材が復刻することは、私たちのように、当時を知らない人にとって、新しい刺激となり、また、見分を広めるきっかけとなります。
当時のようにはいかないとは思いますが、今回のような復刻が増えると良いなと思いつつ、もっと知識を増やしていかなければならないと感じました。
執筆者:ドラム・シティ 木澤 & 土田“ つっちー” 嘉範
編集:JPC MAG編集部