From the percussion room of the world
世界の打楽器部屋から Vol.4|ドイツ・カールスルーエ 堀野美佳
世界各国で活動されている日本人のみなさんを「打楽器」というキーワードで、それぞれの生活スタイルや現地の情報など、その土地目線でレポートしてもらう紀行シリーズ第4回目。
今回はドイツ・カールスルーエに留学されている堀野美佳さんよりリポートを頂きました。
※この記事は2018年4月10日発行「JPC 156号」に掲載されたものです。
現地情報
- 国:ドイツ
- 地域:カールスルーエ
- 日本との時差:マイナス8時間(サマータイム時:マイナス7時間)
- 生活言語:ドイツ語
初めまして、堀野美佳と申します。
今回はドイツ南西部にあるカールスルーエより、ドイツでのさまざまなエピソードや暮らしの様子を皆様にお届けいたします!
● カールスルーエの住人になるまで
私がドイツに来て一番大変だったことは、お家探しでした。ドイツへ来てから先輩のお家に住まわせていただいてすぐお家を探し始めたのですが、お家が見つかったのはなんと1か月後…。
ドイツではお家を探すのは難しいそうで、もっと時間がかかる場合もあるのだそうです。毎日住宅情報の載っている掲示板やインターネットのサイトとにらめっこをし、物件を見つけたらすぐに来日したばかりの拙いドイツ語で大家さんに連絡をするのですが、もう住む人が見つかってしまったと何度も断られました。それでも何度も電話をしてやっと今の家を見つけました!
住む家が決まったら、次はビザの申請。
役所の手続きやドイツの銀行口座の開設などを済ませ、提出すべき書類をすべて提出してビザを待つこと半年。やっとビザが手元に届いて、これでやっと正式にカールスルーエの住人になることができました!(本物のビザが来るまでは、仮ビザで暮らしていました)
これからドイツに留学をする予定の方は、先に留学している方やインターネットから早めに物件情報を集めたり、可能であれば物件を見つけたらすぐに大家さんに連絡することをおすすめいたします。
ドイツについてですが、日本とは違うルールがいくつかあり、最初は驚きました。
まず、電車に乗るのに改札がない。しかも駅によってはチケットの券売機がない。券売機がない場合には、電車の中に券売機があるのでそこで購入です。もし電車にもなければ、運転手さんから直接買います。抜き打ちでチケットを確認する人が時々乗っていますので、必ず購入してください。
あと、スーパーが日曜祝日にはやっていません。最初来たときは知らなくて、困りました…。
他にも住む家によっては10時以降シャワーを浴びてはいけない、13 ~ 15時と日曜祝日はうるさくしてはいけない、などあるようです。
私が住んでいるカールスルーエは、とても温かくて親切な方がたくさんいる街です。地図を見ながら道に迷っていると、向こうのほうから「どうしたの?」と声をかけてきてくださったり、重たい荷物を運んでいれば、必ずと言っていいほど手を貸してくださったりします。心の温かいこの街は、今となっては私の第2のふるさとです。
最初はとても心細かったのですが、周りの方々に助けられながら日々楽しく暮らしていくことができています。いつも支えてくださる仲間たちや、遠く離れた日本から応援してくれる家族、先生方を始めとする皆さんの温かさをドイツへ来てより一層感じるようになり、その温かさに心から感謝しております。
● 学校生活
それでは、カールスルーエ音楽大学での学生生活についてお話いたします。
練習についてですが、学校の打楽器の練習室は5つあり、前日~当日に一部屋につき1日2時間ずつ部屋の予約ができるようになっています。部屋が空いていればもちろん予約をしなくても練習できますが、演奏会前などで混雑していてもきちんと予約をすれば10時間は練習できるようになっています。ゆえに演奏会前の打楽器の皆さんはとても早起きです…。
また、レッスンも5つの部屋のどこかで行われるので、その場合はレッスンが優先となります。ちなみにレッスンも予約制です。
レッスン(1回1時間 ~ 言語はもちろんドイツ語です)では、今までの自分の概念が覆されたり、先生の今までに見たことがない奏法を見て驚いたり、たった1回でも受けると自分が成長していくのが実感できます。とてもモチベーションが上がるレッスンを受けることができて本当に幸せです!
学校生活は主に練習がメインとなりますが、もちろん授業に出たり、プロジェクトに参加して演奏したりもします。こっちのオーケストラや室内楽は即席で仲間を集め、約1週間~ 10日かけて集中練習をして本番を迎えるという、短期集中型がほとんどです。
私は今回DAAD(ドイツ学術交流会)主催の、ポーランドのクラクフとオランダのマーストリヒトの学生との3校合同演奏会「映画音楽国際オーケストラ」に参加しました。
初日は14時間かけてクラクフまでバスで移動し、次の日から4日間集中練習、そしてクラクフ、マーストリヒト、カールスルーエで計3回公演を行いました。移動が夜行バスの日があったり、本番直前に他のパートの楽譜を弾くことになったりと辛いこともありましたが、色々な国の素敵なお友達がたくさんできましたし、私自身もこの長い演奏旅行を通してかなりたくましくなりました!笑
私がドイツで演奏する時にとても気に入っていることがあります。それは、たとえ試験であってもドイツの方々は、「Viel Spaß!フィールシュパース!と読みます。(楽しんで来てね!)」と送り出してくださるのです。
日本では「頑張ってね。」と言うところですが、考えてみたら試験だって立派な演奏会。演奏する本人が楽しまなければ、伝えたいことも伝わるはずがない!と、今更ですがドイツへ来て気づきました。それからは、試験でも楽しく演奏できるようになりました。楽しんでね!と励ますなんて、ステキだと思いませんか?
音楽面でも精神的にも、日々少しずつ成長しながら楽しい学校生活を送っています。
● 楽器やマレットや楽譜、どこで買うの?
留学してすぐに私が疑問に思ったのでお話ししたいと思います。
最初はどこで買えるのかがわからなくて、ドイツへ行く前にJPCでマレットやスティックを衝動買いして備えたり、ドイツのネット販売を検索したりしていました。しかーし!カールスルーエは打楽器奏者にとってパラダイスでした!
なんと街の中に様々なマレットやスティック、そして打楽器の楽譜やCDがたくさん売っている「Percussion Brandt」というお店があるのです。しかも学校から市電で10分もかからない距離にあります。JPCと比べるとお店のサイズは小さいし、品数もそこまで多くありません、小さな事務所という感じです。欲しいものが店頭に並んでいなくても、お取り寄せしてくれます。
そして楽器については、隣町のシュトゥットガルトに「Kolberg」のお店があります。こちらはドイツ版JPCとでも言いましょうか笑。とても広いホールにマレットやスティックはもちろん、いろんな楽器がそろっています。私はこの間、チャイニーズゴングとグロッケンのマレットを買いました。ただし、お店に入るには事前に予約が必要です。
大抵の打楽器の物は揃いますが、やはり日本で生産されているマレットや楽譜は高く売られているので、日本で買い揃えたほうが良い物もあります。
● 終わりに
留学して1年半、まだまだ驚きや発見の連続です。楽しいことばかりではなく、文化の違いなどに戸惑うこともありますが、どんなことも私にとって宝物で、とても貴重な経験をさせてもらえることに幸せを感じています。多くの見守り支えてくださる皆様に感謝しながら、演奏家として、ひとりの人間として、より成長できるよう日々精進してまいります。技術や音楽性を更に磨き、打楽器の楽しさを心から伝えることのできるプレイヤーになって、帰国後は演奏会などを通して皆さんにたくさんお伝えしたいです!
私の体験談が、少しでも皆様のお役に立てることができれば幸いです。
堀野美佳プロフィール
北海道函館市出身。
7 歳よりピアノを始め、9 歳より打楽器を始める。
2011 年より武蔵野音楽大学に入学し、2012 年度福井直明記念奨学金を受賞。在学中2014 年度武蔵野音楽大学ウィンドアンサンブルの打楽器奏者に選ばれる。
第11回日本ルーマニア国際音楽コンクールにて打楽器部門第1 位入賞。
現在Hochschule für Musik KarlsruheのMasterに在籍中。
ピアノを石田雅代、磯村叙子、打楽器を大垣内英伸、中谷孝哉、中村功、Thomas Höfs、ティンパニーをJochen Brennerの各師に師事。
※この記事は2018年4月10日発行「JPC 156号」に掲載されたものです。内容は掲載当時のままとなっておりますので予めご了承願います。
執筆者: 堀野 美佳