From the percussion room of the world
世界の打楽器部屋から Vol.10|フランス・ストラスブール Marimba Twins・石田真知、真歩
世界各国で活動されている日本人のみなさんを「打楽器」というキーワードで、それぞれの生活スタイルや現地の情報など、
その土地目線でレポートしてもらう紀行シリーズ第10回目。
今回はストラスブール地方音楽院に留学されているMarimba Twins・石田真知、真歩さんに寄稿して頂きました。
※この記事は2019年10月10日発行「JPC 162号」に掲載されたものです。
現地情報
- 国:フランス
- 地域:北東部に位置するアルザス地方の街、ストラスブール/ Strasbourg
- 日本との時差:8 時間(サマータイム時は7 時間)
- 生活言語:フランス語(ほとんどの人が英語を話せる)
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Marimba Twins フランス留学体験記
~ "ボーダーレスの生きた音楽"が溢れるストラスブール~
初めまして、Marimba Twins の石田真知、石田真歩と申します。
私たちは2019年2月より、フランスのストラスブール地方音楽院/ Conservatoire de Strasbourgに留学しています。この学校に決めた理由はただ一つ、エマニュエル・セジョルネ先生に師事したかったからです!それではこちらでの暮らしの様子や学校でのエピソードなどを「音楽」に焦点を置きながらお届けしていきます!
●渡仏まで
留学を決意し準備を始めます。音楽院への願書を提出し終え、テスト生用ビザを取るため東京にあるフランス大使館へ行きました。
以前日本人モデルのマレットや楽譜などのヨーロッパでの購入は簡単ではなく値段も高くなる、と聞いたことがあったので、この機会にJPCさんへ寄りマレットなどを揃え、準備万端。ハードな留学手続きをなんとかギリギリし終え、いざ渡仏です!
●音楽なしでは語れないストラスブールの街
毎朝、荘厳なストラスブール大聖堂の鐘の音で一日が始まります。家を一歩出るとそこはまるで自分が絵本の中にいるよう。カラフルで可愛らしい街並み、カフェテラスでゆったりと楽しい時間を過ごす人々。そして至る所で様々な”音楽”が聞こえてくるのです。大聖堂の前ではチェロやヴァイオリン、サックスフォーンなど演奏され、鐘の音が相まって、何とも言葉に表し難い崇高な空気感に包まれます。さらにはスチールパンやバグパイプといった珍しい楽器まで。街に溢れる音楽は国際色豊かで、生活に溶け込んでいて、毎日外に出るのが楽しいです。
先日ウィーンへ、大好きなThe Wave Quartetのコンサートを(オケの指揮はナント佐渡裕さん!)、ザルツブルグへモーツアルト作品の室内楽演奏を聴きに行ってきました。違う国へ行くとはいえ、広島-東京間と同じくらいの距離なんです。ストラスブールはヨーロッパ各地にアクセスしやすく、気になる演奏会に足を運びやすいところも魅力です!コンサートは…それはもう最高でした♥
●学び溢れる学校生活
セジョルネ先生によるマリンバやヴィブラフォンのレッスンを、毎週1回受講しています。最初のレッスンではいきなり、コンクールやコンサートなどを提示し、それに向けて「この曲、君にとっていいトレーニングになるし、いいレパートリーにもなるよ」とたくさんの楽曲を与えてくださいました。ジャンルは様々で、多方面から勉強になるものばかりです。また、先生はよく様々な音源を聞かせてくださいます。「聞いてここ!音が混ざり合ってこういう風に聞こえてくるでしょ、この作曲家の音楽はこの効果を出す必要があるんだよ。」「(先生ご自身の作品を聴きながら)こういうサウンド感が欲しいんだよね!」なんて仰います。こうして先生の音楽感覚に触れられることが何よりも大きな学びです。また多くの知識とアイデアに溢れ、研ぎ澄まされた”耳”でのご指導に、多くのことを気づかせられ、常に興奮状態で、日々成長しているのを感じます。そしてこの秋から、ハンドパーカッションを Thomas Vandevenne氏にご指導いただけることになりました、ワクワクです!
学校内では、学生やプロの演奏家によるコンサートやマスタークラスが引っ切り無しに行われています。ジャンルも様々で、その全てがクオリティー高く、しかもほとんどが無料!
素敵な音楽に浸れて、贅沢三昧の日々を送っています。こちらに来て早々、3月に学校主催の4日間に渡る打楽器フェスティバルに参加・出演しました。メインのコンサートでは、先生がアレンジした作品をみんなで演奏したり、いくつかのアンサンブル曲を披露しました。先生を中心に学生が導かれるように演奏したスティーブライヒの"Electric Counterpoint"は、圧巻でした。
500もの客席は満員で、歓声が上がるほどの盛り上がりを見せ、その一体感にこれがヨーロッパか!と鳥肌が立ちました。この他、様々なイベントに積極的に参加するようにしています。
●大好き♥ 打楽器ファミリー
まずこちらの学生は、レベルが本当に高い!先日大きなホールで行われた試験では、これはコンサートか!?と思うようなステージ作り、個性あふれるプログラム、ハイレベルな演奏に脱帽しました。照明一つにしてもこだわりを感じます。プログラムには、自分が作曲した作品や、機材を使う作品、マリンバによるBachを前衛的なダンスとコラボレーションしたり、即興的なものまで組み込んでいる学生もいました。そのチャレンジ精神や創造的な姿はかっこよく、もはや総合芸術!立派な音楽家のコンサートのようでした。打楽器の音楽が柔軟な発想を基に進化し続けているのを目の当りにしました。そんな彼らとは、練習中即興で音楽をしたり、名前の日本語読みをビートに乗せてラップを刻んで大笑いしたり、飲みに誘ってくれたりと(笑)、毎日楽しく過ごしています!
心揺さぶられっぱなしのこの音楽生活、たくさんの刺激を受けながら、皆さんに愛される奏者になるべく、今日もまた練習に励みます!
P.S. 私たちのInstagramやFacebookで、ここでは書ききれていないことや毎日の留学生活の様子を発信していますので、是非チェックしてみてください!応援よろしくお願いします♥
◎Instagram:@marimba_twins ◎Facebook:「marimbatwins」
プロフィール
Marimba Twins(マリンバ・ツインズ)
1993 年生まれ、広島県府中町出身の、石田真知・石田真歩による日本で唯一の" 双子マリンバデュオ"。9 歳からマリンバアンサンブルのグループに所属し、15歳からは本格的に姉妹でデュオ演奏を始める。これまでにそれぞれマリンバを神谷百子、佐藤須美子、辻寛子、浅田美恵子、マリンバとその他打楽器を小川裕雅の各氏に師事。また、Emmanuel Séjourné、Eric Sammut、布谷史人、小川佳津子の各氏のマスタークラスを受講。現在フランスにてEmmanuel Séjourné 氏に師事。実は三つ子。( 株)クライスミュージックエンターテイメント所属アーティスト。
石田真知(姉)
2016年広島大学教育学部音楽文化系コース 卒業。2018年エリザベト音楽大学修士課程 修了。
2017年第1 回TIPC Competition(台湾打楽器国際コンクール)で第2 位を受賞し、台湾国家音楽庁(Taiwan National Concert Hall)にて入賞者コンサートに出演。他多数入賞。
石田真歩(妹)
2016年エリザベト音楽大学 卒業、2018年同大学修士課程 修了。2016年TROMP 国際打楽器コンクール・セミナーにおいてEmmanuel Séjourné 氏のマスタークラスを受講し、最優秀受講生として表彰されコンサートに出演。2017年、新進演奏家育成プロジェクトオーケストラシリーズ第35回広島にて、ソリストとして広島交響楽団と共演。2018年、第24回おきでんシュガーホール新人演奏会オーディションにおいて優秀賞(第2位)を受賞。
※この記事は2019年10月10日発行「JPC 162号」に掲載されたものです。内容は掲載当時のままとなっておりますので予めご了承願います。
執筆者: Marimba Twins / 石田真知 & 真歩