マジェスティック“プロフォニック・スネアドラム”の現在

マジェスティック社は2020年、60周年という記念の年。日本では“プロフォニック・シリーズ”スネアドラムが2016年の発売から4年を迎えました。
「マルチリンク・ストレイナー」に象徴される革新的な存在感は、クラシック打楽器界に少なからずインパクトを与えました。果たしてそのリアルな評価は?
最前線の現場で使用されているプロ奏者の皆さんと、コロナ禍の今、リモートでスペシャル座談会を開催しました。
ご参加いただいたのは、柴原誠さん(新日本フィル)、綱川淳美さん(東京交響楽団)、細江真弓さん(札幌交響楽団)、関聡さん(フリーランス)、福山直子さん(京都市交響楽団)、角武さん(関西フィル)、そして福原泰明さん(僧侶兼打楽器奏者)という豪華な顔ぶれです。

テキスト・進行:内山洋樹(コマキ通商)、企画:山田俊幸(パーカッション・シティ)座談会実施日:2020年9月7日

※この記事は2020年10月10日発行「JPC 166号」に掲載された記事に加筆・修正を加えたものです。

 

4年経ったマジェスティック、プロフォニック・スネアドラムの現在

コマキ通商・内山(以下内山):本日はお忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。皆さま既にマジェスティックのスネアドラムのヘビーユーザーでらっしゃいますので、今更の感じはありますが、確認のためざっくりマジェスティックのプロフォニック・スネアドラムについてご説明いたします。まず何と言っても「マルチリンク・ストレイナー」ですよね。この4ウェイのストレイナーは、4種の響線を個別に、自由に操作・調整ができるという点です。4種の響線の組み合わせは商品により異なります。(詳細は以下の記事を参照ください。)


このシリーズは木胴で4種類、金属胴で2種類の計6種類発売されています。響線の組み合わせはまちまちで、全て異なっています。木胴をみますと、よく見ると真ん中2つは「ブルーコーテッドケーブル」とニッケル巻線やステンレス・ケーブルなどの「メタル系の線」の組み合わせになっているのがわかりますね。この2つがこれらのサウンドの「核」を作るという考え方のようです。そして各太鼓の両端の響線をみると、ここは各太鼓バラバラですね。ここで個性を出すというか、各々のキャラクターを出しています。
では、この中で細江さんは初期の頃からお使いいただいてますが、細江さんのモデルは5インチのメイプルですね。関西フィルさんにいらっしゃった頃から比べて、現在の小太鼓の印象とか、変わった部分はありますか?


細江:そうですね、最初の頃はセットされていたプラスチックヘッドの状態で使っていたんですけど、2年経たないくらいの頃に本皮を巻いてみて、以降はずっと本皮で使っています。札響に来てからは、この3月くらいに大分皮がくたびれてきた感じがしたので、巻き直しました。

細江真弓さん

内山:皮はご自分で巻かれたんですか?

細江:はい。まだ3回目くらいなんですが。オケの仕事が再開したのが8月1日からなので、この前やっと初めて使えた、という感じです。私は初め、当時出ていた5種類の小太鼓全てを試奏させていただいて。その中からこのメイプルの5インチがパワーもあるし、反応が良くて、割と大編成の曲にも対応できそうだったので、これにしました。今も気に入って使っています。

内山:木胴の太鼓っていうと使い込むと鳴りが良くなってくるっていう話を聞くこともあります。

細江:そうですね、最初の1年目より今の方が大分鳴りが良くなっている印象はありますね。馴染んできたような気がします。

内山:ありがとうございます。では好対照になると思うんですが、綱川さんはウォールナットの5インチをお使いです。細江さんとも同じ時期から使い始められました。綱川さんはいかがですか?

綱川淳美さん

綱川:そうですね、私は第一印象からとても「小太鼓らしくて良いな」と思ってたんですけど、オケの中で色々なシェルの楽器を試した結果、うちのオーケストラではウォールナットが一番馴染むなと思って選びました。私は初期設定から何もいじらず使っているんです。音色が明るい曲の時に使っていることが多いですね。やはり4年も使うと音が馴染んできた感じがありますし、オケ自体もこの音に慣れてきた感じもします。
東響は私が入った頃は楽団に小太鼓の選択肢がとても少なかったのですが、私がマジェスティックを使い始めて、初めは皆さんびっくりされてたんですが、「良い音だね」と言ってくださって。とても重宝してます。

関東はウォールナット、関西はメイプル?!

内山:綱川さんと細江さんにお話を伺って思い出したんですが、いろんな地域でいろんな方にお試しいただく中で、なぜか、関西の方はメイプルの厚いシェルを選ばれるんです。それに対して関東はウォールナットが多いんです。関東でも関さんは6.5” のメイプルを選ばれました。関さんはなぜこれを選ばれたんですか?

関:単純に音の好みで選んだんですが、あと、他の皆さんが何を選んだか質問させていただいて、けっこう皆さん浅胴の方を選ばれている感じがしたので、じゃあ僕は深い胴の方を試してみようかな?っていうのがあって、その2点で選ばせていただきました。

内山:関さんはどんなシチュエーションで使うことが多いですか?

関:オーケストラが多いですね。バレエとか。スネアを叩かせていただく機会にはどんどん使うようにしています。あとレコーディングとかでも使ってますね。

内山:先ほどの話に戻りますが、関西では本日はいらっしゃいませんが、元広響の阿部さん、大阪フィルの井口さんもメイプルなんですよね。で、その後京響さんからお声がけいただいて試奏していただける機会を得たのですが、さあどんな結果になるかなと、わくわくしながら待っていたんですが、結果、やっぱりメイプル5インチだったんですよね。

福山:京響も小太鼓は個人持ちが多かったんですね。で、楽団にひとつオールマイティに使えるものが欲しいね、という話になって、楽団で1個買ってもらおうとなったんですね。で、試奏させていただいた中で、私はビーズのついたやつが面白くて、気に入ったりしてたんですけど、いやいやそうじゃなくてとみんなから止められて(笑)、普通のやつ買いましょう!となってこのモデルを選んだ経緯があります。

内山:角さんはちょうど去年の今頃から選定作業に入られましたよね。

角:そうですね。去年の今頃からいろいろ試させていただきました。メインで使っていた楽器が他社の4インチのアルミだったんですけど、それが僕の個人持ちで、それとは性格の違うものというか、対極にあるものを選んだ感じですね。で、6.5インチのメイプルになりました。

内山:やっぱりメイプルか、って思いました。(笑)

角:そうですね。(元同楽団の)細江さんが使っていたのを聴いてて、耳馴染みがあるのもあったと思いますが。

カスタマイズで狙い通りのサウンドに

内山:ありがとうございます。柴原さん、伺ってもよろしいでしょうか?柴原さんはかなりカスタマイズされてますが、その辺のお話を伺ってもよろしいでしょうか?

柴原:はい。もともと新日フィルの先輩方はスネアをいじるのが好きで、こだわりも多く持っていました。そういう楽団に入らせてもらったので、私も色々試してみると、アドバイスして下さったり、たくさん勉強させてもらいました。初めてマジェスティックの楽器に触れたのはティンパニを担当することになっていた吹奏楽の本番で、打楽器まるごとコマキさんにお借りしたと記憶しているのですが。そこにマジェスティックのスネアもあって、「すごい鳴るなぁ」という印象でした。
僕は初めにウォールナットの5インチをお借りすることになりました。とにかく楽器が良く鳴るのがいいですよね。あと響線の反応も良くて、端っこで小さい音
を叩いてもしっかり反応してくれるし、大きな音の時もシャバシャバしない。やっぱりシステムが良いから。これは使えるなと思いました。オケで小太鼓を担当するときは殆ど使用してます。

内山:先日は一緒にカスタマイズするのに協力させていただきました。

柴原誠さん
「この部分」と画面越しに指しつつ。

柴原:はい、プラスチックヘッドの時は良く鳴るんですけど、本皮に換えたとき、何か鼻の詰まるような感じというか、抜けが… どうかなあと思ってて、フープを換えてみたり試してみたんですが、どれもしっくりこない。
そこで、シングルフランジにすれば本皮の巻いてあるフレッシュフープの側面の部分がオープンになって、ミュートされなくなるんじゃないかと思ったんですね。実際に替えてみたものを今日、持って帰ってきたんですけど、この部分です。そしたら音がすごく良くなって気に入っています。
ただこれを実現するのに、マジェスティックのテンションボルトが普通のものより太いんだということを初めて知りました(笑)。結局内山さんに相談して、シングルフランジ用のフックの穴を広げてもらったんですよね。

内山:はい(笑)。ドリルでがーっと、開けましたよね。

柴原:そう(笑)ドリルでぶぁーっと。それでフープが着けられるようになって、そしたら本当に音が変わっていい音になって。すっきりした、って感じです。

内山:柴原さんは6.5インチのウォールナットもお使いですが、そちらはどんな状態ですか?

柴原:6.5インチの方は本皮を張ったこともありますが、まだあまりいじっていません。この楽器は、より圧やパワーが要るって時、また、そういう音色が欲しい時に使いたいんです。今のところ出番は5インチの方が多いですね。

内山:ありがとうございます。次に福原さん。福原さんはイギリスでご活躍中にマジェスティックと契約された稀有な日本人ですが、福原さんお使いのモデルは確か何周年かの特別モデルでしたよね?

福原泰明さん:僧侶兼打楽器奏者

福原:はい、50周年の記念モデルです。シェルはメイプルの5インチで普通の仕様なんですが、外装がラメが入ってて、ちょっとギラついた派手なモデルです(笑)。響線がちょっと違ってて、「コイル」「ブラッククロス」「ステンレス8本」と、「ウッドビーズ」だったんですけども、この組み合わせだと音がなかなかまとまらなくて、それぞれの響線の音が主張しすぎている印象でした。で、変えようと思って、今は「ブロンズ巻線」「ニッケル巻線」「ブルーコーテッド8本」「ガラスビーズ」の組み合わせで使っています。イギリスではアルミを使う機会もあって、その時に「ブルーコーテッド」と「ニッケル巻線」が張ってあったのが良くて、帰国してから購入しました。

ヘッド、響線について

パーカッション・シティ山田(以下 山田):4年前の当時は割と「異質」な登場だったかと思うんです。特にこのストレイナーの機能とか。最近は一般ユーザーさんでもこのスネアを購入される方が増えているんですが、単純にどんなヘッドの組み合わせが良いと思われますか?一般の方に参考になる例があればと思います。あとお気に入りの響線も、皆さんにお聞きしたいです。

柴原:僕は本皮以外の場合はレモのスエードが相性がいいなと思いました。もともと張っていたルネサンスより音が「まとまった」印象があります。響線で思い出に残っているのは、オケのニューイヤー・コンサートではワルツやポルカをいっぱい演奏するんですけど、曲の最後に「ザ─── !」っとスネアのロールが出てくることが良くあるんです。その時は確か「ブルーコーテッド」と「ガット」の2つをセットして、あまり高音成分が出ないようにしたのが、個人的にはかなり気持ち良かったです。

内山:「ブルーコーテッド」とか「ガット」を選ぶときっていうのは、低音を出したいときにチョイスする感じですか?

柴原:「抜けたい音色」の時とそうじゃない時があると思うんですけど、僕はどっちかというとうるさいタイプというか(笑)、いつも結構しっかり目に音出したいと思っているんですけど、邪魔にならない音色というか、ワルツやポルカに「ガット」は結構相性いいなという印象です。

関:僕は、オーケストラの場合は主に本皮で、それ以外のブラスとかレコーディングでは標準のルネサンスを使っていて、まだいろいろ試せてはいないんです。響線はオケに馴染ませたいときは「ブルーコーテッド」が丸みがあって馴染ませやすいですね。で、例えばブラスの中とかで、主にスネアがしっかりテンポを提示していく時とかは、「シン・ニッケル」をそこに足すと、音色がパリッとしてリズムがシャキシャキするんです。周りからもその音色が際立ってやりやすい、聞き取りやすいという声も頂いてます。

福原:私はヘッドは初めルネサンスが着いていたんですが、高い倍音が出過ぎる気がしまして、今使っているのはアサプラのアラミド繊維のヘッドを張っています。裏面はシライ・ミュージックさんのホワイト・コーテッドですね。裏面をコーテッドにすることで余計な倍音をカットできていて、気に入っています。響線は、私は金管バンドでやることが多いので、必須なのが「ニッケル巻き」ですね。あと「ブロンズ巻き」もあると、この2つで低音から高音まで幅広くカバーできるので、基本的にはこの2つはオンにしてます。で、「ブルーコーテッド」をオンにすると音が締まってパリパリします。トゥッティで大音量が必要な時は4本全部オンにして、p の裏打ちの場合は「ニッケル」と「ブロンズ」だけという使い分けもしてます。

細江:私はプラスチックヘッドは元々着いていたルネサンスヘッドしか使ったことがないです。他に試してみたいのはコーテッドとかスエードとかですね。オケでは本皮で全部やっちゃいます。
個人的にルネサンスは結構好きなので、妥当なのかな、とは思います。響線は真ん中2つの「ブルーコーテッド」と「シン・ニッケル」をよく使います。あとそれに加えて「ブラック・クロス・コード」を足したりもしてます。あと、気に入ってる音色で言えばその「ブラック・クロス・コード」と「シン・ニッケル」を組み合わせた音が個人的には好きです。使える曲はあまり無いような気がするんですけど(笑)、個性のある感じが好きなんです。

内山:使えそうな曲とか、ないですかね?こういう「紐」素材を響線に採用しているメーカーって他には無いと思うんですが、この響線の解説を本国のサイトとかで読みますと、「ミュートの役割もします」と書かれてて。そんな感じはありますか?

細江:確かに一番「ミュートされた感」はありますね。なんて言うか、そのミュートされた感じと、「シン・ニッケル」の音と太鼓の音の混ざった感じが私は結構好きで。でもオーケストラではなかなか使えないかな?って感じです(笑)。

角武さん

角:僕はまだなかなか使える機会がないんですけど、今はカルフォの0.22mm くらいのちょっと厚めの皮を張って、今乾かしている途中です。印象としてはちょっと厚めの皮の方が合うのかな?と感じます。響線は「シン・ニッケル」と「ブルーケーブル」が好みですね。そこに足すとしたら、「ステンレス・ケーブル」を足して華やかにして使いたいなと思っています。4本全部使ってみるとか、どうなるかなーとか思ってるんですが、今後足したり引いたりして、色々試したいですね。

綱川:割と初期の頃に内山さんに一式全部持ってきていただいた時に、ルネサンスとかコーテッドとか、本皮も試す機会はありました。本皮はそのまま着けるとそんなに相性は良く無いな、と思いました。さっきの柴原さんの話を聞いていて、やっぱり結構カスタマイズしないと難しいんだなと。コーテッドはマジェスティックのパキッとしたサウンドが際立ってていいなとも思うんですけど、やっぱりオケの中でって考えちゃうと、ちょっと際立ちすぎる印象で、吹奏楽とかブラスバンドには向いてるのかなっていう気がして。なのでルネサンスがいいのかなと思っています。響線は、初めの頃は解らない中で色々試しながら使っていたんですが、4本全部入れちゃうと、音が詰まっちゃう感じがして。試行錯誤した結果、今はどれか2本を組み合わせて使ってます。明るい音色にしたい時は「ステンレス」&「シン・ニッケル」にして、ちょっと暗めにしたい時は「シン・ニッケル」&「ブルーコーテッド」とかです。ブロンズは最近あまり使っていない気がします。
あと、私は青いちっちゃいジェルを割と常時貼っています。やっぱり響き過ぎちゃう感じがあるので、特にホールで鳴らすと響き過ぎるかな?と感じます。ミュートで少しタイトめな感じにしますが、それでも良く響くんです。

内山:なるほど。この中でミュートを使っている方はどれくらいいらっしゃいますか?

関:僕はジェルミュートだと重さが結構あって、「しっかりミュート」っていう感じになちゃうので、東急ハンズに革の薄っぺらーいの(註:衣料用に処理されたナメシ革)が丸まって売ってるんですが、それを買ってきて、小さく長方形に切って、それをぽんと手前のところに載せるぐらいですかね。たまに消しゴム乗せたりすることもあるんですけど(笑)。僕の使ってるスネアの場合それくらいが程良いミュート具合かなって思います。

柴原:僕はプラスチックヘッドのカーンという音を抑える程度に、ほんの少し何か貼ってます。

福山直子さん

福山:私、今朝楽団行って(楽器本体を)持って帰ってきたんですけど(一同拍手!)、ヘッドは最初のルネサンスのまま使ってます。響線ですけど、(皆に見せて)これ、解ります?何もカスタマイズせず、ご機嫌で使ってます(笑)。本皮は一回試してみたいとは思っています。
で、響線は、「音が止まる」っていう話もありましたが、私は基本4本とも上げて使うのが好きで、そこから減らしていくっていうのが多いですかね。で、細江さんが仰ってたのはこの黒いやつですか?( ブラック・ クロス・ コードを指して)

細江:そうですね。

福山:ポップスの演目なんですけど、リズムをタッタカ出す時は4本全部入れて、で、ドラムセットっぽい感じでやる時に、この黒いの1本だけでやって、そのステージをこの1台だけで途中で変えることなくやったことがあります。普通ならヘッドベロベロにしたL 社のをつかってたんですけど、これ1台だけで行けたことがありました。あとはビーズは使ってみたいなと思ってます(笑)。

パーカッション・シティ佐藤:ひとつ伺いたいのですが、もともと付いている4本にさらに1つこれは足したほうが良いよっていうものはありますか?例えば高校生とかに使いやすいものとか、あったら教えていただきたいです。

柴原:中高生の時ってロールが悩みになりがちだと思うのですが、この楽器の標準仕様だとパリッとしていて怖いと思います。スパイラルワイヤーを付ければ、元々学校にある楽器に近いと思えるんじゃないかな?それが最初から付いているモデルがあってもいいんじゃないかと思います。

綱川:「スチューデント・モデル」みたいな響線のセレクションのものが(商品として)選択肢にあっても良いかもしれないですね。

山田:参考までに、ヘッドって、皆さんどんなタイミングで変えますか?

柴原:もうやべえかなーと思ったら。(一同笑)

内山:何がやべえかなーと思うタイミングですか(笑)?

柴原:音がまとまらなくなってきたら。調整しても思うようにまとまらない時、「あ、ヘッドのせいかも」って(笑)。外してみたら、「あ、ヘッドのせいだ」って。

スネアドラムのヘッドの張り具合。高め?低め?

山田:テンションって、割と高めが好きな方とか、低めとか、ありますか?曲によっても色々あるとは思うんですが。

柴原:これ僕も聞きたかったんですけど、自分の好きなチューニングが皆さんあるとは思うんですけど、前に阿部さんがいらっしゃった広響さんにお邪魔した時、(マジェスティックの)アルミのスネアを見せてもらって、結構ピッチが低かったんですよ。「こんな低くしてもイケるのね」という感じでした。別の機会に新日にエキストラで来てくださった方が、「綱川さんはかなり高いピッチでイケイケでやってる」って仰ってて。チューニングの幅が広くても対応できるんだなと思いまして。

山田:僕の印象だとこの楽器ってレンジが広い印象があるんです。高くしても低くしてもツボが鳴ってくれるというか。皆さんはどの辺がツボだと思われますか?

柴原:これ、どうやって答えればいいんですか(笑)?気持ち良いところ?(一同笑)自分の思っている感覚によりますよね。

内山:ピッチは決めてらっしゃいますか?

柴原:僕はだいたい「A」くらいで、ちょっと高めにと思っても「B」くらいだと思ってます。

関:僕はだいたい目安は「A」くらいにしてます。それくらいが一番気持ちよい感じでしたね。

福原:個人的な好みは「A」くらいなんですけど、好みよりも少し高めにしておくと色々なことに対応出来る気がします。明確にピッチを決めてはいませんが、だいたい「B」くらいかなと思います。

細江:私はあまり「この音程」みたいなのは決めないので、チューニングしていて「あ、この音気持ち良い感じだな」っていう感じでチューニングしてます。それでその時にたまたまどのくらいのピッチなんやろと思って計ってみたら、「A」に近い事が多いかもしれないですが。あまり「こう」とは決めてないです。もしかしたら私は結構低いほうかもしれないです。

角:僕は普段はだいたい「B」とかで、今回のマジェスティックではちょっと低めで「A」くらい。

綱川:私もだいたい「B」くらいですね。明るめがやっぱり良いです。響線で調整とかもするんですけど、例えば落ち着いた感じのサウンドが欲しいとなったら本皮の楽器を使ってしまうので、だからマジェスティックを使う時はもうこのキャラクターが生きる曲で使うことにしちゃってるから、基本は高め設定です。

福山:私はいつも「A」くらいです。ちょっと低め、ですか。

内山:意外と低めの方が多い印象ですね。

山田:そうですね。やっぱり「この音程」と言っちゃうと皆それに追随しちゃうので、そんな風には言いたくないんですけど、細江さんの仰ったように「気持ちの良いところ」の加減ができるのが一番言葉のニュアンスとしては伝えたいところですね。

さらに突っ込んだエピソード

内山:さあ、ここからは少しイケてないところなど、突っ込んだところのお話など伺えればと思います。私の知る限り、大きなトラブルに見舞われたケースがあるのも存じております。実はこの中にもおいでなんですけど…. 今福山さんがめっちゃ笑っておいでです(苦笑)

福山:はい、 京響です!(笑)

内山:では早速伺っちゃいましょう。福山さん。

福山:はい。本番中やったんですけれども、私は叩いてなかったんですが、もう一人の打楽器奏者の方がスネアをされてて、本番でスイッチが上がらなくなって。全く動かなかったらしいです。
チャップリンの無声映画に音楽をつけるっていう演目で、舞台に上がっていた楽器を、照明が落ちてて暗かったので、こそこそっと見に行ったりして。初めは「そこ、オフじゃないやーん」なんて思ってたんですが、でも見たら本当に上がらなくて。で、(楽器は)裏に下げまして、急遽練習場に別の楽器を取りに行ってもらって(京都コンサートホールだったので幸運にも割と近かった)、交換して何とかなったっていうことがあったんです。で、その直後内山さんに連絡して説明して。送り返したんですが、見てもらったら出荷時の組み立て不良ということがわかったんです。このメインのレバーの(取り付けてある)ネジが外れていたという、あってはならない事が起こってしまったという…

内山:タイヘンご迷惑をおかけしました!(頭を下げて)

福山:いえいえ(笑)。その後私がスネアを使う機会が来たんですけれど、もうビビってしまってねー。上がらへんかったらどないしようって、不安に見舞われた時期がありました。でもそれからはトラブルなしです!

内山:いや本当にもう、京響さんのその事件が実は初めてだったんですけど、とにかくすぐに送り返していただいて、届いて即分解して、そこで初めて問題箇所が判った次第なんです。で、今は入荷した商品は全部、一度ストレイナーを外してチェックしてます。チェックというのはそのレバーを動かした時に、支点になっているネジが一緒に連動するようになっているのが正常なんですが、たまに一緒に動いてくれないものがあるんです。そういうのが発見されたら全解体しまして、適正に組み直しをして出荷するようにしています。なのでもうそのようなトラブルは起きないと思います。

福山:良かったです。安心しました。

この場所にテフロンテープを。

山田:ストレイナーですが、やっぱり重い感じするんですかね?例えば4本全部入れた状態だとテンションの力かかるじゃないですか。ストレスなく行けます?

(お手元にある方々が試し始める。)

福原:1 本でも4 本でもそんなに大きくは違わないですね。誤差くらいあるかもしれませんが。

内山:スイッチが重く感じた時の対処方法がひとつあって、響線の端の金属プレートの部分が、スイッチ側の受けのブリッジ部と(スイッチの動作時に)擦れる場所があるんです。このプレートに薄いテフロンテープを貼ると解消される事があります。

綱川:あの、多分私だけだと思うので、スルーしてくださっても構わないんですけど(笑)、トラディショナル(グリップ)なので、楽器を傾けて演奏するんですが、本番では多少緊張もして腕のポジションも上がるから、本番でなったことはないんですけど、練習中に個別スイッチの頭にスティックのお尻とか手とかが当たっちゃて、カコン!って落ちちゃうんですよ。

柴原:(それ!と指差しながら)ある!ある!

綱川:あります?!(笑)これがもう少し低い位置に付いてたらいいのにとか思うんですけど。

(細江・福山同意の挙手)

綱川:私の右手の軌道がちょうどスイッチの真上にあるみたいで。

山田:確かに、ちょっとした力でぽーんと外れますよね。
柴原:個別スイッチを入れた状態がこれくらい(半分くらいの高さ)だったらいいんですよね。
(フルに上げて)ここだから、ほら(ひっかけてスコーンと落とす)結構いい音で鳴ってしまう。
(一同・笑)

柴原:僕はここ、メインのレバーが反対側についたバージョンが欲しいんです。いつも左手でオン・オフをするのですが、ストレーナーを手前にセットした場合、操作しにくくて。

内山:手作りで作りましょうか。

綱川:柴原モデル(笑)

柴原:俺だけしか使う人いないモデル(笑)

山田:こんな響線あったらいいなとか、ありますか?ビーズとか面白いんですが、あまり浸透してない気もして。

福原:ビーズはオンにするか、オフにするかで大きく変わりますよね。ビーズ・オンにするとサウンドにザラつきが生まれます。その存在感を有効活用するようにしてます。

内山:ウッド・ビーズの音を聴いたことある方はいらっしゃいますか?

柴原:フィールド(ドラム)についてますよね?

内山:はい。あの音、強烈ですよね?

柴原:でも、楽器にはあってると思います。ベルリオーズの「幻想交響曲」に出てくるロールの部分とか、合うと思います。

マジェスティックのお勧めポイント

内山:では最後になりました、皆さんに伺いたいんですが、これから小太鼓の購入を考えてる方にマジェスティックの小太鼓をお勧めするとしたら、どんな点をお勧めしたいですか?もちろん購入者にも色々な事情があります。個人で買う方、団体の備品として買う方、受験生の方など、さまざまですが、その辺りも含めてお聞きしたいです。

細江:私はメイプルシェルのモデルを使わせていただいていまして、とても好きだなと思っているので、これを是非お勧めしたいですね。5インチですがシェルの厚みもある点と、響線の反応の良さもお勧めです。繊細な音からダイナミックな音までしっかり出せるので、オールマイティに使えます。受験生から吹奏楽団まで、幅広く使っていただける楽器じゃないかなと思います。

角:僕は6.5インチを使っていますが、教育現場や吹奏楽では5インチの方が使いやすいのかなとは思います。僕もヘッドとかフープとかいじるのが好きなタイプなんですけど、4つの響線が初めから付いているのは試し甲斐ありますよね。普段他社の(3列の響線の)楽器を使っている時に、個別に響線をオフにするにはネジで結構緩めないとオフにならないんですね。その手間が省けるのは利点ですね。

福山:私も細江さん、角さんと同じで、とにかく反応が良い、端っこ行ってもしっかり鳴る、思ったことが音にしやすい、というのが便利で、いつもこればっかり使ってるんです。どんな曲でも響線の切り替えでいけてしまうっていうのも便利ですし、値段も、ソナーほど高くない。これは、おすすめポイントじゃないですか(笑)? 受験生さんでも、ある程度しっかりしたものがほしいという方でもお勧めしやすい値段設定じゃないかなと思います。

柴原:マジェスティックのスネアはとにかく「良く鳴る」っていうのと、先ほどから出てますが「響線の反応が良い」というのが一番の売りだと思うんですよね。そしてまさに福山さんが仰った通りなんですが「ここまで機能があるのにこの値段で買える」っていうのは、ちょっとすごいんじゃないかな、と最初から思っています。あと、ケースがしっかりしてる。これも購入時は結構大事なので。あとは、響線がいっぱい変えられるっていうのはもちろん勉強にもなるし、自分の作りたい音を1個のスネアの中で探せるのは魅力です。あと響線を付け替えるのが楽だっていうのも重要で、この作業が手間だとそれすら嫌になったりするんですが、これはぱっぱと変えられるのが良いですね。

福原:みなさん仰ってるように、反応の良さですね。囁くような音色からアンサンブル全体にも負けないサウンドまで、奏者の出したい音が出せる楽器だと思います。あと、ウォールナットっていう珍しい木を使っている小太鼓もあまり他のメーカーでは無い気がするのですが、いろいろな種類のシェルの選択肢があるのもセールスポイントだと思います。

綱川:もう、出尽くしちゃった感があるんですけど…(笑)例えば中学校とか高校とかに教えに行く機会があるんですが、よくチューニングの仕方がわからないとか、ものすごい楽器を大切に使っている学校もあったりして。例えば基本的な「小太鼓らしい良い音を身につける」っていう意味でも、マジェスティックが初めての1台になるっていうのはすごくお勧めだと思っていて、響線の反応がpp からff まで本当に素晴らしいので、そこもお勧めポイントです。あと他の小太鼓
に比べて音色のバリエーションがすごく多いので、何台も取っ替え引っ替えすることなく、1台でかなり使える楽器だと思います。


関聡さん

関:そうですね、みなさん仰るように、反応が良いのと、あとパワーが元々あるので、パワーが無いものから引き出すのは難しいですが、パワーがあるのを抑えるのはいくらでもできるので、幅が広いのは使い勝手が良いと思いますね。そして響線の組み合わせもかなり色々あって、1つ足すだけで音ってこんなに変わるんだってことをこの楽器を使い始めて実感しています。他のメーカーのようにヒモ外してこーしてあーしてっていう手間がなくなるのは助かってます。
時短にもなってますね。
あと響線のところで話せばよかったんですが、映画音楽で「スターウォーズ」をやった時に珍しい指定があって、「ギロチン・ドラムス」っていうのが出てきたんですよ。なんだこれ?!と思ったんですが、その時に「レッド・ガラス・ビーズ」がすごく役に立ちました。ちょっと低めにチューニングして、ダルダルっぽくして、うっすらとこれは響線なのか?じゃないのか?みたいなころころした音にしてそれっぽい感じが出せたので、それはすごく助かりました。
で、この前受験生とスネアを見に行った時に、大人の方々からするとこの価格帯は安く感じるかもしれないんですが、受験生からするとちょっとだけ予算オーバーしやすいのかな?って思います。

内山:なるほど。いくらだったらお勧めしやすいですか?

関:色んな話を聞くと、予算10万前後、8 ~ 9万くらいですかね。プロフェッショナルからするとこのパワーとか、機能とか、良いと思うんですけど、中高生っていうと、機能が多いので、扱いが難しいと思うんです。もう少しシンプルなんだけど、この良いところは損なわない、くらいの程良いところがあればな、みたいな。難しいとは思うんですけど。

山田:でも4年前の発売当時は、1台目にこのスネア買ってくださいとはなかなか言えなかったんですが、今数年経ってこれが1台目でもこの先十分使えますよ、という感覚になってきたんです。
そしてこう言えるようになったのは、現場でお使いいただき、発信していただいた奏者の皆様のご協力がバックボーンになっているのは間違いありませんので、本当にありがたいと思います。

内山:本当にそうですね。本日は皆さまから貴重なお話をたっぷり拝聴でき、素晴らしい時間でした。長時間にわたりお付き合いいただきましてありがとうございました!

 

あとがき

こんな時代だからこそ、リモートならではの企画を!ということで、全国のマジェスティックのプロ・ユーザーの皆様と、楽器について語らう時間を共有できればと企画しました。ブランド立ち上げ当時よりも、今は実践に裏付けられた確かな評価が後楯となり、ますますお勧めできる商品に育ってきたと実感できる機会となりました。私の拙い進行にも真摯にご対応いただき、結果として大変内容の濃い、楽しい時間となりました。ご協力いただきました奏者の皆様に感謝申し上げます。誠にありがとうございました!(コマキ通商・内山)

※この記事は2020年10月10日発行「JPC 166号」に掲載された記事に加筆・修正を加えたものです。一部掲載当時の内容のまま記載されている部分がございますので予めご了承願います。

対談・鼎談・座談会

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