世界の打楽器部屋から
世界の打楽器部屋から Vol.17|ドイツ・フランクフルト 難波芙美加
世界各国で活動されている日本人のみなさんを「打楽器」というキーワードで、それぞれの生活スタイルや現地の情報など、 その土地目線でレポートしてもらう紀行シリーズ第17回目。 今回はフランクフルト音楽・舞台芸術大学に在籍されている、難波芙美加さんに寄稿して頂きました。
※この記事は2021年10月発行「JPC 170号」に掲載されたものです。
現地情報
- 国:ドイツ
- 地域:ヘッセン州 フランクフルト
- 生活言語:ドイツ語
- 日本との時差:8時間(サマータイム時7時間)
フランクフルト音楽・舞台芸術大学修士課程に在籍している難波芙美加(なんば ふみか) です。 今回このような機会を頂きとても嬉しく思います。私の留学先であるフランクフルト での生活や音大のことなどを(私のことも)、少しでもみなさんに知っていただければ、また、留学を考えている学生のみなさんの参考にもなればいいなと思います。
フランクフルトはどんなところ?
フランクフルト・アム・マインは、ヘッセン州に属するドイツ第5の都市で人口は約76万人。 高層ビルが立ち並ぶ風景は、ニューヨークのマンハッタンにもなぞらえられ、市内を流れる マイン川からの景色を「マインハッタン」なんて呼んだりします。 たくさんの演奏会を聴きに行くことは、ヨーロッパで勉強をする上でも極めて重要だと思っています。フランクフルトには、フランクフルト放送交響楽団、フランクフルト歌劇場、アンサンブル・モデルンがあり、トップレベルのオーケストラ、オペラ、現代音楽を聴く機会がた くさんあります。 オーケストラも現代音楽もバランスよく学びたいと思った私には、うってつけの留学先でした。また、ベルリンフィルやミュンヘンフィル、ウィーンフィルなどの世界有 数のオーケストラも度々、演奏旅行に訪れるため、ここに居ながらにして、日々生み出される伝説級の名演奏に触れることができるのです。
留学のきっかけは?
留学や海外での暮らしに、もともと興味は持っていました。私が中学生の頃、出身地岡山では、カールスルーエ音楽大学打楽器科教授である、中村功先生のリサイタルが頻繁に開催されており、それを聴きに行くたびに少しずつドイツ留学への興味が深まってきました。「まずは語学学習だ!」と思い、高校3年の7月から一年間、YFU日本国際交流財団の交換留学プログラムで、フランクフルト・オーダーという、ポーランドとの国境近くの街に留学をしました。留学中は、普通の高校に通いながらドイツ語の勉強をしたり、友達やホストファミリーと共にドイツのさまざまな街を旅行したりして、日本とは異なる文化や生活習慣を体験しました。この交換留学を通して、 ドイツ語や外国での生活に親しめたことが、今の留学への助けになったことは間違いありません。
フランクフルト音大での生活について
フランクフルト音大は市内中心部にあり、楽器や歌に加えて、ダンスや演劇を学べる学科もあります。特に現代音楽に取り組める機会が豊富で、毎月第一火曜日に、現代音楽やパフォーマンスを幅広い視点で紹介する、30分ほどの演奏会が開催されます。演奏会の後にはディスカッションの場が設けられ、作曲科の学生を中心に多くの学生が参加します。私も学校が始まってすぐに、ルイス・アントゥネス・ペーニャの「30枚のシンバルとエレクトロニクスのための音楽」を演奏しました。作曲家と直接対話しながら演奏を仕上げていく過程や、演奏後のディスカッションは、新鮮な学びに満ちていて楽しく、ますます現代音楽への興味が深まりました。その他にも、学生オーケストラとアンサンブル・モデルンとのコラボ企画もあり、ソロだけでなくオーケストラでも現代音楽作品に触れる機会があります。レッスンはソロはもちろんのこと、フランクフルト歌劇場オーケストラのティンパニ奏者と打楽器奏者によるオーケストラスタディのレッスン、そしてドラムのレッスンが、いずれも毎週あります。週に4人の先生のレッスンを受けることになるので、一週間が充実していて、あっという間に時が流れていきます。一年の間にいくつものプロオーケストラが、 正規団員や契約団員、アカデミーやインターンのためのオーディションを行います。アカデミーやインターンには年齢制限があり、早いところでは、26歳までしかオーディションを受けることができません。そのため、特に留学一年目はオーディションに向けてオケスタをたくさん練習し、一緒にオーディションを受けるクラスメイトとおさらい会をしたり、練習方法を相談したりしていました。お互いに今まで自分がやってきた練習方法や新しいアイデアを出し合って、日々切磋琢磨しています。次に在籍するアンサンブル・モデルンアカデミーでは、現代室内楽を学ぶことになります。一年間という短い期間ですが、新たな出会いも楽しみに、さらに知見を広めるべく、引き続き邁進していきたいと思います‼
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難波 芙美加 プロフィール
岡山県出身。東京藝術大学音楽学部卒業。 卒業時に同声会賞、アカンサス賞を受賞。 フランクフルト音楽・舞台芸術大学修士課程修了。 2019年度バイエルン州立劇場管弦楽団コーブルク実習生。 2021年10月よりインターナショナル・アンサンブル・モデルン アカデミー生。 Percussion Treeメンバー。
執筆者: 難波 芙美加
編集:JPC MAG編集部