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特別寄稿 上野信一「録音活動の軌跡と今思うこと」
8月7日にCD Phonix Marimba Orchestra IVがリリースになりました。
この最新CDはマリンバ特有の温かな響きを満喫できます。また、曲中で描かれる様々な「愛」が祈りの響きとなって天に昇って行くとの思いを込めて制作したCDで励みや癒しを享受できるアルバムです。
収録曲はチャイコフスキー、モーツァアルト、シュウベルト、シベリウス、メンデルスゾーン、スメタナ、エルガー、パウルス、ウィテカーといったクラシックから現代に至る作曲家の作品を収めた珠玉のアルバムです。ぜひお聴きください。
打楽器奏者:上野信一
先日久しぶりにJPCを訪れた際に私の最新CDリリースが21枚目になったという話をしたところ、CD製作に関連した記事を書いてくれないかとの有り難い依頼を頂き、コマキ楽器さんに感謝しつつ、私の演奏経験と録音にまつわる経緯を書かせていただきました。
私、1978年にフランスのストラスブールでデビューリサイタルを開催して以来、既に45年が過ぎたのですが、自分が演奏活動をしてきた中で録音は自分の音楽を見つめるのに大いに役立ってきました。
私の録音との関わりは私が大学4年の時、ちょうど吉原すみれさんが初のレコード制作のための収録をした時にそのセッティングのアシスタントをさせてもらったのが、ソロのレコーディングを間近で体験した最初の経験でした。その後、ヨーロッパに渡り、在籍したオーケストラでのレコーディングを通して自分の表現を具現化する経験ができました。これが自身の演奏を録音することへの興味を増大させました。
私はオーケストラ在籍中に国際コンクールで2度入賞し、2度の協奏曲共演の機会を頂くことができました。さらにパリ ポンピドゥーセンターで開催された「国際打楽器フォーラム」でのリサイタルを含めヨーロッパで10数回のリサイタルを行いました。そうした機会にはRadioFranceによる実況や収録されたことも有り、これも良い経験になりました。
私は10年間のフランスでの演奏活動の後、1985年に帰国リサイタルを行いましたが、演目はフランスで磨いてきた作品でしたので確信を込めた演奏ができました。これが後に私の最初のソロCD「プサッファ」として実りました。
1988年にパーカッショングループ・フォニックスを結成することになったのですが、自分とグループのレパートリーを録音して残そうとの思いに至り、当時まだ誰もやっていなかった演奏テクニック動画収録し「目で見る打楽器演奏テクニック」という(VHS)教則ビデオが音楽之友社より発売、また同じ企画を東芝EMI出版でもさせて頂き、販売されました。これが縁で最初の私とグループのCDとなって東芝EMIから販売されることに繋がりました。(当時JPCさんともコラボでティンパニの演奏のVHSも制作販売した記憶も蘇ってきました)
こうした録音の継続が今回制作のCD「Phonix Marimba Orchestra IV “ Love & Prayer ” 」となり、21枚目のCDとして実を結びました。次に演奏の軌跡としてのCDとそれぞれの内容を紹介させて頂きたいと思います。
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演奏の軌跡【CD LIST】
Shiniti Uéno Solo, Shiniti UENO & PHONIX-Réflexion, Phonix Marimba Orchestra
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東芝EMI 吹奏楽アンサンブルシリーズ(打楽器アンサンブル)上野信一&フォニックス・レフレクション:TOCZ-9230
t.ゴーガー:五人の打楽器奏者のための「ゲインツボロー」、de Ponte「セレブレーション&コラール」、小長谷宗一:Solo Timpaniと打楽器アンサンブルのための「組曲」、松下 功:打楽器合奏のための「オプティカル・ウェーブ」、真島俊夫:「カンヴァセーション 1&4」、山本佑介:「オン・ザ・カントリー・ロード」「ノック・アンド・クリック」
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上野信一&フォニックス・レフレクション「 WISH 」ムジカ・ヴィヴァンテ:PHNX-0001
Sculpture in Wood, Wish Good Speed, Percussive ConferanceNo.1, Omphalo Centric Lecture, Visional Train, ets.
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上野信一「二十世紀 打楽器芸術作品集」“ PSAPPHA ”:PHNX-0002
E.Carter :Recitative,March,Moto Perpetuo,Improvisation. K.Stockhausen: ZyklusNo.9. I.Matsushita: Optical Time for Timpani Solo. I.Xenakis: Psappha
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上野信一&フォニックス・レフレクション「KECAK」:PHNX-0003
I.Matsushita : Optical Wave for 6 Percussionists. Mark Ford : AftaStuba!. A.Nishimera : Kecak. Niel de Ponte : Celebration & Chorale. Tomas Gauger : Gainsborough.
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上野&フォニックス「西村朗 パーカッションの宇宙」―ヤントラー:PHNX-0004
A.Nishimura’s Percussion Works : Pundarika for Percussion Solo. Yantra for Percussion Ensemble, Kala for Solo Marimba & 6 Percussionists. Matra for Solo Marimba & Solo Timpani &5Percusionists.
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上野信一 & 高橋悠治 Duo Recital LIVE Recording 「花の世界」:PHNX-0005
狼/The Wolf for Percussion Solo. Lullaby a & b for Piano Solo. Bachiana afroasiatica for Piano Solo. Batttiti Bachiani for Piano & Percussion. Coyote Melody for Percussion Solo. Flower World for Piano & Percussion
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上野&フォニックス「打楽器魂」J.N.ZIVKOVIC作品集:PHNX-0006
TRIO Per UNO for Percussion trio. MAGMA for Marimba Solo. The CASTLE of MAD KING for Percussion Solo. LMENT E DANZA BARBARA for Marimba Solo & PercussionTrio. TAK-NARA for Percussion Quartet.
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上野信一 ピアノと打楽器による作品集「デュオローグ」:ALCD-7183
Quasi una Sonata of N.J.Zivkovic. Duologue for Timpani & Piano of A.Nishimura. Concertino pour Percussion et Orchestre.<Version with Piano> of J.Balissat. Matre’s Dance for Piano & Percussion of J.Psathas. Concerto pour Percussion <Reduction pour Percussion & Piano> of A.Jolivet
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Shiniti Uéno with PHONIX A.ジョリヴェ 打楽器作品集「セレモニアル」:ALCD-7204
HEPTADE for Trumpet & Percussion. Suite en Concert pour Flute & Percussion, Concerto pour Percussion. Cérémonial pour 6Percussionistes Homage à E.Varèse. Ionisation for 13 players.
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Shiniti Uéno & PHONIX 「アメリカン・コンポーザーズ」:ALCD-7213
Catching Shadows of I.Trevino. Quarte for Percussion of W.KRAFT. Mallet Quartet of S.Rech. Concerto for Violin & Percussion Orchestra of L.Harrison. Third Construction of J.Cage. Ionisation of E.Varèse.
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PHONIX Marimba Orchestra Vol.I:ALCD-7195
砂紋 Ripple Marks : 奥定美和. 3つのアメリカの歌 奥定美和編曲. Marimba Heritage of Mark FORD. 3つの日本の歌 奥定美和編曲. 遙かな海 : 安倍圭子, 山を渡る風の詩:安倍圭子, マリンバ・アンサンブルと打楽器のための「プリズム変奏曲」:安倍圭子
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PHONIX Marimba Orchestra Vol.II :ALCD-7218
「蛍」(Fierfly): N.ドートリー / プリマ・ルーチェ:後藤洋 / 「砂の書」:木下牧子 / シンフォニアM「神々の声を聞け!」:新実徳英 / 「4つのロシアの歌」(御者よ, 馬を急がさないでおくれ, いつか遠いところで, 寂しいアコーディオン, 黒い瞳):奥定美和 編曲 / スカラムーシュ ~5人のマリンバ奏者のための~ :D.ミヨー(編曲 安倍圭子)/ 「花は咲く」:菅野よう子(奥定美和 編曲)
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上野信一 ヴィブラフォン リサイタル 「ヴィブラ・エルーファ」:ALCD-7227
Vibra -Elufa of K.Stokhausen. I com el cant del rossinyol of J.Soler. 「扇」Evantail of 中川俊郎. 「風のかたち」Shape of the Wind. for Vibraphon e solo.新実徳英. PUNDARIKA of 西村朗
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上野&フォニックス「邦人作曲家 打楽器アンサンブル作品集」:ALCD-7240
湯浅譲二:Projection Trans-Sonic for 8 players. 安良岡章夫:10 Sticks. 松平頼暁 :トライクロイズム. 岸野末利加:散華 Sange for 6 percussionists. 福士則夫:「青海波」6人の打楽器奏者のための
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PHONIX Marimba Orchestra III 「ザ・クラシカル」:ALCD-7276
W.A.Mozart: Overture from Le Nozze di Igaro. S.Barber : Adagio. J.S.BACH : Burandenburg No.3.BWV.1048. A.Vivardi : Concerto for 2 violins in A Minor. G.Fauré : Cantique de Jean Racine. E.Grig : Holberg Suites Opus.40.
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上野信一「ティンパニ作品集 Vol.1. Solo」:ALCD-7254
一柳慧:リズム・グラデーション、岸野末利加:モノクロマー・ガーデンIII、松下 功 :OPTICAL TIME、E.CARTER : 8 Pieces for Timpani全曲(1 Saëta.2 Moto Perpetuo.3 Adagio.4 Recitative.5 Improvisation. 6 Canto. 7 Canaries. 8 March.
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上野信一「ティンパニ作品集 Vol.2.協奏曲集」:ALCD-7263
W.Thärichen : Concerto for Timpani. J.C.C.Fisher (Hertel):Concerto for Timpani. A.NISHIMURA : Concerto for Timpani & 5Percussionists. William KRAFT : Concerto for Timpani No.1.
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上野信一 & フォニックス「クセナキス ペルセファッサ / プレイアデス」:ALCD-7284
Iannis XENAKIS : Persephassa. / Pléïades
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上野信一 &フォニックス「福士則夫 打楽器作品集」(2枚組):ALCD-7288 / 7289
「海を渡る鐘の音」「樹霊」〜Soloマリンバのための「グラウンド I」「青海波」「赤道のゼフィルス」「カップル」「海流」、Solo打楽器奏者のための「スコール」、手のための「ていろ」>/span>
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上野信一 & フォニックス「池辺晋一郎 打楽器作品集」:ALCD-7300
「バイ・バランスVII」二人の打楽器奏者のために、「木のあゆみ」マリンバのために、「ティンパニは語りそして、呼びかける」、「雨のむこう側で」四人の打楽器奏者のために、「サファリI」6人の打楽器奏者のために、「樹の心」マリンバ・アンサンブルのために、「テン・テン・イダテン」10人の打楽器奏者のために、
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PHONIX Marimba Orchestra IV 「愛と祈り」:ALCD-7303
P.I.チャイコフスキー:Serenade for Strings 1st mov. / W.A.モーツァルト:Ave Verm Corpus / F.シューベルト:「聖なるかな」ドイツミサ曲より、J.シベリウス:「フィンランディア讃歌」、S.パウルス:「巡礼者の讃歌」、B.スメタナ:連作交響詩「我が祖国」より<モルダウ>、F.メンデルスゾーン:「森への別れ」、P.I.チャイコフスキー:「ケルビムの讃歌」、J.ルネスタッド:「愛の祈り」、E.エルガー:「ソスピーリ(ため息)」、エニグマ変奏曲より「ニムロデ」、E.ウィテカー:「スリープ」、F.シューベルト:「聖なるかな」ドイツミサ曲より(Bonus Truck)//
振り返って今思うこと
これまで21枚のCDをリリースしたわけですが、最近、「CDは製作をしても今どき売れないのに」と、よく言われます。CDを製作する大手企業は売れないものは作らないので、しばらくすれば廃盤になっていきます。しかしデーターは残るからとお考えの方もいらっしゃるでしょうが、打楽器の音楽は残念ながらマイナーな世界です。人々が検索をしなくなれば、やがてデーターは埋もれていきます。偉そうなことを言うつもりはないのですが、打楽器の音楽が好きで演奏をすることで、これを広め、発展させてきたのと同様に、私たち打楽器を愛する者が、やがてこれらが打楽器音楽のクラシックとして認知されていくように、また、アーカイブとして後の世代の打楽器奏者に残すことができればと思っています。
今回、私のこれまでの録音活動を評価してくださり、記事を掲載させて頂けたことは私にとって大変嬉しく、これまで支えてくださったJPCさんに心から感謝申し上げます。この記事をご覧になってくださった皆様、どうぞJPCさんに足を運んでいただき、お買い求めいただければ幸いです。
執筆者: Percussion Group 上野信一&フォニックス・レフレクション主宰:上野信一