世界の打楽器部屋から
世界の打楽器部屋から Vol.3|日本 PPP 元田 優香
世界各国で活動されている日本人のみなさんを「打楽器」というキーワードで、それぞれの生活スタイルや現地の情報など、その土地目線でレポートしてもらう紀行シリーズ第3回目。
今回は日本より発信という事で、海外でのパフォーマンス経験をもつ5人組「PPP」のリーダー元田さん(上の写真中央)に寄稿して頂きました。
※この記事は2018年1月10日発行「JPC 155号」に掲載されたものです。
皆さんこんにちは、Percussion Performance Players略してPPP(ピーピーピー) リーダーの元田優香と申します。
まずは、私たちPPPの事から。
私たち5名のメンバーは全員洗足学園音楽大学を卒業しています。私の母校精華女子高等学校でのマーチング経験を大学で活かし、マーチングパーカッションサークルを発足。その活動を一緒にやった気の合うメンバーで、マーチングを中心とした打楽器パフォーマンスグループとして2004年に結成しました。
オリジナル曲があるわけでもなく、何か本番があるわけでもない結成当初は、大学の練習室で5人の演奏を揃える事に集中した基本練習の日々でした。
記念すべきPPP初のステージは、私が日本打楽器協会新人演奏会でグランプリを頂き、翌年の招待演奏をPPPで行った時。元田が作曲をした“SHAPE OF BEATS”で、マーチングバスドラム3台をキックのように並べ、マーチングスネア、シンバル、ロートトム、カウベル等を使用しドラムにようにセット。メンバーには、マリンバ、ヴィブラフォン、グロッケン等の鍵盤楽器やシンバルラインをやって頂きマーチングパフォーマンスを披露。
クラシックの世界ですし、新人演奏会でマーチングをやる人はおらず、緊張しながら結果を待つ出演者の皆さん、ご家族や関係者の皆さんにはリラックスできる時間になったかな?(笑)
さらに、同年に行われた日本打楽器協会20周年記念打楽器新人特別演奏会にも出演させて頂き、こちらもPPPで演奏しました。
大学卒業後も聴講生として在籍していた為、学校の練習室や楽器を利用して練習や本番を行っていましたが、できたのはこの特別演奏会まで。
その後は、自分でスタジオを予約したり、基礎練習や小さい音の楽器の練習はこっそり自宅でやったりという毎日が続きました。
大学では当たり前のようにたくさんの楽器が使用でき、練習場所もあり、悩みなく使いたい楽器を集めて演奏していましたが、卒業したらそんな訳にもいかず、楽器を買うのか借りるのか、誰から借りるか、どこで練習をするか、安いスタジオはあるのか…そんな事をいつも考え迷っていましたね。今もですが(笑)
改めて打楽器は大変だなと感じます。
こんな悩みもありながらも13年も続けられている事に自分たちでも驚きますが、現在の使用楽器やリハーサルスタジオ、ニューヨーク公演のお話し等をさせて頂きます。
● マーチングスネアドラム
マーチングスネアといえば、外や広い体育館で使用する事を前提に作られていますのでヘッドや胴、シェル等全てが重くしっかりした作りになっています。通常のスネアよりも大きく重いしかさばるし、楽器をちょこっと持って演奏行ってきます!というにはいかないですよね。買うにもお値段しますしね。
そこで見つけたのが、胴が全くないTSS マックスレンジスネア!!
アメリカのパーカション最大のイベント “PASIC”に参加した際に、REMOのブースで発売前の試作品として出品されていたマックスレンジスネアに出会いました。
胴がないので軽い!ヘッドの跳ね返りももちろんマーチングスネア!これは良い!
という事で帰国しメンバーに相談し即決で注文! 2~3 ヶ月程待って届きました。
が、まだ試作の段階で買ったせいか、いろいろ問題がありました。6台買って全部響き線の具合がバラバラ。ヘッドから完全に離れてしまっているのがあったり、音もちらかってなかなかまとまらなかったり。自分たちで試行錯誤しながら調整し、なんとか演奏できる音へ。
しかし問題はまだ。フープの幅が広く14インチのスネアのはずが 15インチサイズで普通のスタンドには入らない。買った当初は工夫して普通のスネアスタンドを使用していましたが、叩いてる内にズレたりする為3年前位にようやく16インチまで対応するスネアスタンドを購入しました。
いつの間にかTSSは廃番。もう手に入れる事はできないので大事に使うも、どうしてもヘッドは痛みますよね。TSSを分解すると普通のマーチングスネアドラムヘッドをそのまま使う事もできません。そこでPPPの楽器&大道具リペア担当(と勝手に決めてますが)秋場が細工し、ヘッド交換も可能となりました。
いろいろ問題があっても、コンパクトグループとしては(笑)マックスレンジスネアがかかせないのです。
● 鍵盤楽器
マリンバのような大きく、運ぶのも一苦労する楽器は使用せず、机に置く小さめの3オクターブのシロフォンのみを使っています(笑)小さなシロフォンでも3~4人並んでメロディー、伴奏、十分演奏できます!!(けしてマリンバが嫌いなわけではなくむしろ大好き!あくまでコンパクトでどこまでできるか!)
飛行機に乗せて全国各地、ニューヨーク公演にも持っていきましたし、コンパクトって素晴らしいです!(笑)
● ドレミパイプ
PPPの数少ない音階のある楽器。この楽器を使って“世界の果てまでイッテQ”に出演&芸人さんへの演奏指導をさせて頂き、今じゃPPPの代表楽器にもなっています。
この楽器を始めたきっかけは、小さな子どもや障害のある方でも簡単に音が出て、カラフルで見た目も楽しいという理由で10年前に購入し取り入れました。『ドレミの歌』ではお客さんや子どもたちに楽器体験もしてもらっていますが、10年前には珍しいとされていたこの楽器も今はよく知られた楽器となってきましたね。
ドレミパイプの曲も増え、イッテQで演奏した『トルコ行進曲』はYouTubeの再生回数もどんどん伸び世界中の方々に観て頂いております。演奏しながら使っていた25本のドレミパイプをお片づけするというパフォーマンスは世界でもPPPだけではないでしょうか。
3年前から演奏している『チャルダッシュ』では約50本のドレミパイプを使用し、鍵盤楽器のように並べて手作りのゴムマレットで演奏したり、1人のスティックを構えた奏者の前を、4人が円を描きながらメロディーの順でドレミパイプを持ち替え演奏したりするパフォーマンスはあまり見ない奏法かと思います。
『トルコ行進曲』や『チャルダッシュ』、是非YouTubeでご覧になって頂ければと思います。
● ニューヨーク公演
マーチングといえばアメリカ。本場のアメリカでの公演を夢にみていたPPP。
2014年、結成10周年という事もあって、ご縁のあったとある方が動いて下さり、アメリカの学校での公演が決まり、一般公演、駅や外での路上ライブが次々と決まって5本の演奏機会を頂きました。
日本とアメリカの反応の違いがあるのか、果たしてPPPはアメリカでもウケるのか、緊張と楽しみと少しの不安と。
楽器はほぼ持参。コンパクトグループといいつつもやはり打楽器は移動が大変です。楽器を持っての電車移動は辛かったな。
反応はというと、日本でウケの良いトルコ行進曲よりもマーチング楽器を使用する派手でビートのある曲が反応も良く盛り上がり、演奏が終わると皆さんお声をかけて下さいました。
Grand Central Stationでの演奏は相当な観衆で、チップや歓声も桁違い。今思い出しても興奮してしまいます。
学校公演での子どもたちの反応は日本もアメリカも同じ!笑う場所もほぼ一緒でこちらも楽しませて頂きました。
英語力のない私のMCも子どもたちには伝わっていたようでしたね。笑
海外公演はまだアメリカのみなので、今後アジアやヨーロッパ、いろいろな国で演奏しPPPのパフォーマンスを広めていきたいです。
● 練習スタジオ
PPPは決まったスタジオを持っていない為、地区センターだったり、学生の頃からお世話になっている岡田知之先生のスタジオだったり、普通のバンド用スタジオだったり、いろいろな場所を利用しています。
ワンマンライブの前には河口湖あたりで3泊4日位の合宿を行ったり、長いツアーがある時はツアー先でスタジオを探してやったりする事も多々あります。長野の太鼓道場で練習させて頂いた事もありますし、地域の音楽事情なんかも知れて楽しいですね。
演奏+パフォーマンスの曲作りは1日で仕上げることは難しく相当な時間を費やしていますが、どの曲も練習スタジオ込みで思い入れがあります。
練習も場所が変わる事によって新たな気持ちで曲に向き合え、パフォーマンスが生まれているのではないかと思います。
● 最後に
日本にはたくさんの打楽器アンサンブル、パフォーマンスグループが存在しています。
打楽器パフォーマンスの魅力が世界中に広まり、盛り上がっていきますように。
PPPも15周年、20周年に向けて今後も精力的に活動して参ります。
是非、ライブに足を運んで頂けますと幸いです。
Percussion Performance Playersメンバー
元田 優香/もとだゆうか:通称リーダー
秋場 一宏/あきばかずひろ:通称あっちゃん
山口 古津絵/やまぐちこづえ:通称こづえちゃん
鈴木 和徳/すずきかずのり:通称スーさん
木村 就生/きむらなるお:通称ナルちゃん
※この記事の内容は、2018年1月10日発行「JPC 155号」に掲載した当時のままのものです。PPPに関する最新の情報は、PPP公式webサイトをご確認ください。
PPP Percussion Performance Players
PPP Percussion Performance Players
執筆者: 元田 優香