世界の打楽器部屋から Vol.1|スイス・チューリッヒ 上野岳

世界各国で活躍されている日本人のみなさんを「打楽器」というキーワードで、それぞれの生活スタイルや現地の情報など、その土地目線でレポートしてもらう紀行シリーズ第一回目。
今回はスイス・チューリッヒに留学されている上野岳さんよりリポートを頂きました。

※この記事は2017年7月10日発行「JPC 153号」に掲載されたものです。

現地情報

  • 国:スイス
  • 地域:チューリッヒ
  • 日本との時差:マイナス7 時間
  • 生活言語:ドイツ語、スイスドイツ語

みなさんはじめまして上野岳です。今回色々なご縁があり「世界の打楽器部屋
から」の第一号を飾らせていただくことになりました!なんといっても第一号ということで緊張しています笑。暮らしている部屋の様子や演奏会の様子、スイスに来てからの自分の打楽器事情の変化などについてお伝えできればと思います!

● スイスでの暮らし

日本で言う学生寮なところに住んでいて、私の部屋はキッチン、お風呂、トイレが共同の7 人部屋です。まずスイスに住むにあたり大変な事は役所での手続きでした!住民登録や滞在許可書、銀行口座開設、保険などたくさんの書類審査がありましたが同居人からたくさんの助けを得て、なんとか無事に終えることができました。今では一番の心強い味方だと思い日々共に生活しています!

そして何より大変なのが物価の高さです。なんでも高い!だいたい日本と比べ何でも倍の値段と思っていただければと思います。少しでも生活費を抑えるために、安い切符などを使って物価の安いドイツまで行き、大量に食料を買って可能な限り自炊して生活しています。

● スイスでの演奏

今期は2 年に1 回開催される、ジュネーブ音楽院との合同イベントに参加することができました。

演奏スケジュールは、

○1日目、ジュネーブのヴィクトリアホール
○ 2日目、チューリッヒのトーンハレ
○ 3日目、ヌーシャテルの教会

という三日連続公演でした。演目はReinhold Gliereの交響曲3 番、指揮はモスクワフィル常任指揮者のYuri Simonovu。私のパートはTam-TamとGlockenでしたがどちらの楽器も耳栓をしていても鼓膜が破れると思うほど叩かされました。あとから指揮者についての話を聞いたところ、大きい音を求めるので有名な方らしいとのこと。でも大御所ならではの指揮の振り方や感覚、歌い方や癖など様々な要素を吸収することができました。

● スイスの打楽器事情

まずマリンバの奏法をバートングリップからスティーブンスグリップに変えたことが大変でした。もちろん強制ではないのですが、レッスンで先生と違うグリップというのはなにかと不都合が生じてくるので、私は意を決して変えることにしました。まだ4 ヶ月程ですがすでにぷっくりとタコができています。

バートンやトラディショナルグリップとは違いグリップの支点が4つあるぶんコ
ントロールはかなり繊細な部分まで行き届きますので私は変えてよかったと思っています。そして日本では流行っていないスタイルでもあるのでどんどん自
分のものにしていくとともに日本でもスティーブンスグリップが流行るよう活
していきたいと思っています!

● スイスでの練習環境

学校には9つの打楽器練習室があり、そのうち3つが先生の部屋となっています。もちろん先生の部屋も練習可ですが、レッスンが優先となります。練習室の管理は生徒に任されていて、一人一人が合鍵を持っていて自由に予約して使
用することができ、基本的には練習室難民にはなりません。そして私の学校は
ヨーロッパでも珍しいですが24 時間練習可能です!学生証さえ持っていれば
好きな時間に何時まででも練習することができます。練習漬けとはまさにこのことですね!

次に楽器の種類ですが、太鼓類は主にAuralという楽器で、リムも木で作られています。マリンバは全部で7、8 台ありYAMAHAかADAMSです。
私は普段YAMAHA-6100で練習しています。

マレットはERHOというメーカーの柄が黒いモデルが大流行しています。現在Martin Grubingerが講師で来ているためMartinが使うマレットやスティックをみんながマネするという現象が起きています笑。でもやはりMartinが使っているだけあってとてもよいものです!そしてなにより安い!マレットは種類にもよりますがよく使っているのは4 本で78ユーロなので破格だと感じます。ぜひJPCでも取り扱って欲しいものです。ただ柄がバーチなので使用する人はかなり限定されてしまいますが。。。

参考までにスイスに来てから始めた曲を紹介したいと思います。
※Partita2 Bach
※Libertango Eric Sammut
※For Marimba2 Tokuhide Niimi
※5 Etudes for Marimba Gordon Stout
※4 Rotations Pour Marimba Eric Sammut
※Marimba Spiritual Minoru Miki
※Variations on Japanese Children’ s Songs Keiko Abe
※Ilijas Nebojsa J.Zivkovic

● 最後に

ヨーロッパにいると日本では経験できないことがたくさんあります。知らない音楽表現,奏法、知識、たくさんのことを学んでいき、そして日本へ持ち帰りたいと思います!

上野岳プロフィール

北海道札幌市出身
4 歳から18 歳までピアノの手ほどきをウィリアムス美由紀に受ける。
中学校での吹奏楽部をきっかけに打楽器を始め15 歳より本格的に指導を受ける。打楽器を杉山智恵子、大垣内英伸に師事。マリンバを中谷孝哉に師事。第10 回ルーマニア国際音楽コンクールにて奨励賞受賞。第19 回長江杯国際音楽コンクールにて3 位入賞。現在Zurich Hochschule der Kunste でMaster Music Performance-Konzert に在籍中。打楽器をKlaus Schwarzler,ティンパニをRainer Seegers,マリンバをRaphael Christenに師事。

※この記事は2017年7月10日発行「JPC 153号」に掲載されたものです。内容は掲載当時のままとなっておりますので予めご了承願います。

スイス

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